一時期、あちらこちらにあった「高級食パン」を売りにしたベーカリーが次々と閉店。ブームの急減速と話題になっています。ネットを中心にバッシングまで起き、これまでの食のブームとは違い、異質の存在となった高級食パンブーム。みていきましょう。
「高級食パンブーム」終焉に見え隠れする、「プチ贅沢もできない」日本人の苦境 (※写真はイメージです/PIXTA)

バッシングを受ける「高級食パン」…物価高も追い打ちに

食に関して「空前の大ブーム」は高級食パン以外にも色々とありました。記憶に新しいところではタピオカを思い出す人も多いでしょう。それに比べて高級食パンブームについては、随分と辛辣な言葉が並びます。

 

そんな流れに拍車をかけたのが、テレビタレントが「バターと砂糖いっぱい入り過ぎ」「もうケーキ」と熱弁をふるったことでしょうか。それが多くの人の共感を呼び、「高級食パンは食パンにあらず」という流れを生みだし、ブーム自体に疑問符が投げかけられるようになったのです。

 

その矛先は、ブームの立役者だったプロデューサーにも。一風、変わった店名をつけることで話題を呼んでいましたが、その名前がかえって悪目立ちするようになり、「砂糖やはちみつを入れただけで、高級ではなく単に高額」などと、SNSを中心にバッシングを受けるように。こうして高級食パンブームは、これまであった食のブームの中でも異質な存在となり、急激にトーンダウンしていったのです。

 

ただ、ちょっと甘いケーキのような食パンにも、多くのファンがいることも確か。「自分へのご褒美」などと、一定の支持を受けています。しかし昨今の物価高に「ちょっとした贅沢もしていられない」という流れが広がっています。

 

総務省が発表した8月の消費者物価指数(2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数で102.5となり、1991年9月以来、30年11ヵ月ぶりの上昇率となりました。その発端となったのが、前出のとおり、ロシアのウクライナ侵攻。長期化の様相をみせるなか、専門家の間では、最低でも年末までは物価高は続くとされています。そのため「ちょっとした贅沢でさえも控えよう」という動きが広がっているのです。

 

高級食パンブームの終焉。そこにはプチ贅沢さえも愉しむことができない、苦しい日本人の状況があるともいえるのです。