株式相場が好調な現在、個人投資家の間ではFIREブームが巻き起こっています。今回は10年でFIREを達成したサラリーマン兼業トレーダーのAさんを例に、副業として行うFXでFIREを目指す際の注意点を株式会社ソーシャルインベストメントの清水一喜氏が解説していきます。
サラリーマン兼業トレーダー、10年でFIRE達成後の悲しい末路 ※画像はイメージです/PIXTA

誰でもFXでFIREを目指せるのか

結論から申し上げると、FXでFIREを目指すことは大変難易度が高く、誰でもできるものではありません。投資信託や不動産収入などは半永久的に利益をもたらします。しかし、FXは自主的に取引することで利益を得る投資であるため、長期的に勝ち続けられる人はほんの一握りのプロトレーダーでしょう。

 

とはいえ、リスクを限定して長期的にFXを行っていけば、理論的には兼業トレーダーでもFIREを達成することができます。副業としてFXに取り組む人がFXを通してFIREを目指すためにはいくつか乗り越えなければならない壁があります。どのような障壁が存在するのかを解説したうえで、FXでFIREを実現するためのロードマップをみていきましょう。

FIREを達成するために必要なもの

FIREを達成するために、必ず達成しなければいけない目標が「残りの人生の生活費を賄えるだけの資産の獲得」です。ここでいう資産とは、現金や株式、債券などある程度価値が担保されたものを指します。安心してFIREを達成するためには自分が生活に困らない程度の資産がなければいけません。基本的に最低限度の生活を40年間過ごす場合、1億円以上の資産を形成する必要があります。

 

プロのFXトレーダーで現役のうちに数億円の資金を稼ぎ、FIREを達成する人たちの多くは、FXで稼いだ資金をよりローリスクな株式や不動産などの資産に換えて配当金や不動産収入で生活費を賄っています。

 

副業で始めたFXでFIREを目指す人も同様に、副業で得た収入が1000万円を超えてきた時点でほかの資産への分散を考えるべきかもしれません。FXは大変リスクが高い投資なのでFXのみに資金を集中すると取り返しがつかない事態に陥る可能性があります。

兼業トレーダーAさん、10年でFIREを達成するも…

FXは投資のなかでもハイリスクな取引です。ハイリスクな投資であるため、FIREに達成するまでの期間が短いことも特徴です。そんなハイリスクハイリターンなFXでFIREを達成するも資産の分散を考えなかったAさんの悲しい末路を紹介します。

 

Aさんはサラリーマンとして働く傍ら、100万円を元手に兼業トレーダーとして活動していました。彼のFXの成績は順調で月平均10%の利益を出していました。単純計算ですが、100万円を元手に月10%の利益を出し続ければ、約5年で資金が1億円に達します。Aさんは堅実なトレーダーで10年経った時点でFXの口座が1億円を突破しました。

 

そしてAさんは長く勤めてきた会社を退職してFIREを達成させました。FIRE後は時間に余裕ができるため、Aさんはいつも以上にトレードに専念してしまったのです。

 

AさんがFIREを達成して数年後、未曾有の経済ショックが世界中を襲いました。トレーダーとして活動しているAさんにも経済ショックの影響が出てしまいます。Aさんはなかなか損切りできず、含み損が数千万円に到達してしまいます。

 

さらにAさんはFX口座しか持っておらず、すべての資金をFXにつぎ込んでいました。その結果、損切り後の資金では残りの人生の生活費を賄えなくなってしまいました。Aさんは生活することが難しくなり、就職を目指しますが、長い間無職だった人を雇う会社はなかなか存在しません。彼はアルバイトをしながら、ほそぼそと生活する中年男性になってしまったのです。

 

一時は数億円もの資産を形成した人が未曾有の経済危機で資産をなくしてしまう話ですが、FXの世界ではよくある話です。資産を短期間で築き易いFXですが、その分一瞬で資産を失う可能性が高いのもFXの特徴です。