プロスペクト理論とは?
プロスペクト理論を簡単に説明すると、人は合理性よりも損失回避を選ぶということを証明した理論です。トレードの世界でたとえると、10万円の利益が出たときの喜びよりも、10万円の損失が出たときの悲しみのほうが精神状態に与える影響が大きいと言われています。人は同じ額の損得であっても、損失を被る場合のほうが精神へのダメージが大きくなります。
つまり人は心の奥底でリスクを極限まで小さくして、なるべく損失を被らないための行動をしようとする心理が働くようです。
棚ぼたの利益が負のスパイラルへ繋がる理由
自分の想定外の展開でたまたま利益が出た経験はありませんか? 誰でも想定外のラッキーで利益が出れば喜ぶでしょう。しかし、この心の油断がそれ以降のトレードに影響をおよぼす可能性があるのです。
プロスペクト理論でも説明したとおり、人は1度手に入れたものを失くすことに大きな恐怖感をもっています。リスク回避を選択する傾向があるトレーダーが、偶然の利益確定によって陥りやすい負のスパイラルが次の2点です。もしあなたが次の2点に該当するようであれば、いつか大きく資産を減らす可能性があるため、この機会に自身の認識を改める必要があるかもしれません。
1.得た利益が少なくなるといつも以上にロットを張るようになる
2.ここぞというときにポジションをもてなくなる
まず1の「得た利益が少なくなるといつも以上にロットを張るようになる」ということです。この現象はトレードセオリーに逆行した行動です。プロのトレーダーは負け続けているときは感情的にならないようにあえて通常よりも小さいロットで取引します。プロスペクト理論で証明されている損失回避の事例をもって説明すると、人間は得た利益が小さくなることにひどく苦痛を感じてしまいます。初心者トレーダーはこのひどい精神的苦痛から開放されるために、いつも以上にロットを張って失った損失をとり返そうとします。
しかし、このような精神状態では合理的なトレードができず、より損失を拡大させてしまうことがほとんどでしょう。さらに損失が大きくなると、より大きなロットを張って同じようなミスを繰り返します。ちょっとした偶然の利益確定が資金を枯渇させるきっかけになることは、初心者トレーダーによくある事例です。
次に2の「ここぞというときにポジションをもてなくなる」ということです。得ることよりも失いたくない気持ちが強いトレーダーは大きなチャンスを逃す傾向にあります。たまたま大きく収益を上げたことによって、次の行動に支障をきたすトレーダーも多くいます。
本来なら自分が新規のポジションをもつ場面でも、損失を出すことに恐怖を覚えてトレードを控えてしまいます。トレードを控えるだけであれば、チャンスを逃すだけなので問題はありません。しかし最悪の場合、機会損失をしてしまった自己嫌悪によって無理なトレードをしてしまい、大きく資産をすり減らしてしまうでしょう。