熱中症はなぜ怖いのか?
■熱中症は、いうなれば「多臓器不全」の状態。命に関わることも
まだまだ暑い日が続きます。今年の夏は新型コロナや電力需給不足、そして記録的な暑さが相まって、熱中症が非常に多発しました。8月下旬になっても連日30度以上という猛暑が続いており、引き続き注意が必要です。
熱中症と聞くと「熱い中で活動しているからでしょ」といった認識が未だに多いように感じます。
熱中症を簡単に説明すると、過剰な発汗が原因で引き起こされる脱水による諸症状、ということになります。知らぬ間に多くの汗をかいてしまう時期に、知らぬ間に脱水が進行して熱中症に陥ってしまい、場合によっては知らぬ間に命の危機に陥る…これが熱中症の恐ろしさです。
人間の身体を構成する細胞は、絶妙な電解質バランスの上に成り立って生きています。過剰な脱水が起こると、体内の電解質バランスが崩れ、細胞の活動が妨げられてしまいます。
したがって熱中症とは、全身の細胞がすべて等しくやられてしまう、いうならば多臓器不全状態ということになり、生命を大いに脅かす非常に危険な状態であるということ。これをこの機会に再認識しておきましょう。
■熱中症になるとどうなる?段階別の症状
初期段階では、めまい・立ちくらみ・気分の不快感などが現れます。足がつるなど「こむら返り」も初期症状として起こることがあります。この早期の段階で熱中症の存在を疑い、対処することが非常に重要です。涼しい日陰で休ませ水分を摂らせ、場合によっては受診が強く推奨される状態といえます。
症状が進行すると倦怠感や吐き気や嘔吐、さらに進行すると意識障害、けいれんを引き起こし、電解質バランスが崩れれば不整脈を引き起こして心停止、場合によっては命を落とすことにつながります。
熱中症のリスク要因とその対策
■子供が熱中症になりやすいワケ
子供は体温調節が未熟で、しかも体表面積あたりの発汗量が大人より多く、さらに身体が小さいためそもそも水分の貯蔵量が少ない。こういった理由で脱水に陥りやすいです。
とにかく夏場は子供にはこまめな水分補給が推奨されます。また気象予報や熱中症注意情報などを活用して、屋外で遊ばせる時間帯なども考慮するようにしましょう。
子供はギリギリになるまで全力で遊び走り回るものですので、大人達がしっかりと注意しておく必要があります。
■屋内(特に夜間)こそ油断大敵
屋外だけでなく屋内でも熱中症のリスクがあります。
建物そのものが熱せられてしまい冷めにくいため、夜に「気温が低いから」とエアコンを切ってしまうと、たちまち屋内が温められてしまうこともあります。
熱中症で搬送される患者さんの半数が屋内で発生していることからも、屋内での、特に夜間の熱中症には注意しなくてはいけません。夜間でも適切なエアコンの使用をおすすめします。また寝る前は水分補給もしておきましょう。
さらに熱中症のリスクファクターとして重要なのは、温度ではなく「湿度」です。高温多湿な日本の夏は、汗が蒸発しにくくなるため熱がこもりやすく、熱中症になりやすいものです。屋内屋外を問わず、風通しが良く湿度の低い環境を作りましょう。
■マスク着用中の「隠れ脱水」にも要注意
マスク着用は熱中症の大きな要因になります。口元をふさぐことで粘膜が乾きづらくなり、脱水になっても口渇感を感じにくくなるため、知らぬ間に進行してしまうケースが多発しています。
特に呼吸機能が未熟な子供に屋外でマスクをつけさせることは危険ですので、国や厚労省が推奨しているように、公園などの広い屋外で遊ばせる場合は子供のマスクを外すようにしましょう。
マスクの感染予防効果は限定的ですが、熱中症のリスクファクターとしては重大で、場合によっては命に関わることにもつながります。大人達が適切に指導していく必要があります。熱中症の話だけでなく、そもそも運動するときのマスク着用は危険です。学校や部活の関係者の方には是非とも徹底していただきたいところです。
熱中症予防にオススメの飲み物は?
■何を飲むかだけではなく「どう飲むか」も重要
熱中症対策として水分補給は当然ですが、電解質バランスを崩さないために、糖分や塩分が適切に入った経口補水液やスポーツドリンクなどが最適です。これらがなければ水500ccに食塩をひとつまみ入れたものを飲むと良いです。
また一度に多く飲まずに、少しずつゆっくりと飲み続けることがポイントです。
経口補水液やスポーツドリンクを薄めて子供に飲ませる人がいらっしゃいますが、薄めると電解質が上手に吸収されなくなり逆に脱水を引き起こす場合もありますので、薄めずに飲ませるようにしましょう。
最後に、水分補給が大事だと再三述べましたが、一度にたくさん飲んだとしても実は意味がありません。体内に急激に入ってきた水分は、急激に排泄されてしまうからです。
外に出るときや運動するとき「限定」で水分を摂るのではなく、普段から積極的に水分を多く摂るようにして、体内の水分貯蔵量を多く維持しておくことが重要です。
北浜 直
北浜こどもクリニック 院長