日本は世界に誇る長寿国ですが、長生きできる分、老後の不安も大きいといえるかもしれません。もし介護が必要になったら。もし老人ホームに入居することになったら。老後の「もしも」について見ていきましょう。
平均年金「14万円」だが…日本の高齢者が撃沈する、老人ホームの請求額 (※写真はイメージです/PIXTA)

平均値では医療費は増えないが、老人ホームへの入居を考えたらどうなる?

年を重ねても、医療費が増えるわけではない……しかし、これはあくまでも平均値であり、介護が必要となり施設に入居、というケースもあるでしょう。その場合、どれほどのお金が必要になるのでしょうか。

 

ひと口に老人ホームといっても、民間施設の場合、入居金に1億円など、驚くほどの金額の施設も。かかる費用はピンキリです。

 

一方、公的施設の場合、居宅サービスは利用できるサービス料(支給限度額)が要介護度別に定められており、限度額の範囲内でサービスを利用した場合は、1割(一定以上所得者の場合は2割~3割)の自己負担。限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。

 

施設サービス自己負担の1ヵ月あたりの目安は、個室や多床室など、住環境によって変わりますが、厚生労働省によると、特別養護老人ホームで要介護5、多床室利用の場合、合計金額は10万2,200円程度、ユニット型個室を利用した場合、13万9,500円としています。これを老人ホーム入居の際の最低金額と考えておくとよいでしょう。

 

また老人ホームの入居期間は介護付有料老人ホームで3年3ヵ月、特別養護老人ホームでは3年8ヵ月、サービス付き高齢者向け住宅では1年6ヵ月ほどといわれています。

 

ホーム入居に最低月10万円と考えると、プラス400万円が最低ラインといったところでしょうか。

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均受取額は月額5万6,358円、厚生年金受給者の平均受取額月額14万6,145円。寿命が尽きるまで安心して暮らしたいと願うのであれば、老人ホームへの入居も視野にいれたいもの。ただ年金だけが頼りというなら、多くの日本人にとって老人ホームへの入居は非現実的な世界と言わざるを得ません。

 

昨今、「老後のために必要な貯蓄額」などと耳にする機会が増えました。2,000万円とか、5,000万円とか、参考にする資料で金額はまちまちですが、その多くが「健康であること」が前提。介護が必要になったり、ホームに入居することになったり。そのようなことは想定外です。できれば老後は穏やかに生きていきたいもの。万が一のことも考えて資産形成を進めることが、唯一の正解だといえるでしょう。