日本有数の高級住宅地「田園調布」
多くの人にとって、一生に一度の買い物であるマイホーム。悩みどころは色々あるけれど、どこに買うか、は大きな悩みのひとつ。勤務先のこと、子どもの教育のこと、街の利便性や雰囲気……ポイントはそれぞれでしょう。なかには「どうせ大きな買い物、憧れの街に家を持ちたい!」などと考える人もいるでしょう。
憧れは人それぞれですが、たとえば誰もが認める高級住宅街を有するブランドエリアは、有力な選択肢のひとつではないでしょうか。東京であれば、その筆頭となるのが田園調布です。
日本を代表する高級住宅街である田園調布ですが、その開発が始まったのは大正時代。渋沢栄一らが設立した「田園都市株式会社」によって、英国・エベネザー・ハワードが提唱した「田園都市」の実現を目指し計画がされました。
ただハワードが提唱した「田園都市」は、人口3万人程度の限定された規模の、自然と共生し、自立した職住近接型の緑豊かな都市を都市周辺に建設しようとする構想。その点、田園調布は職住近接とは言えない街ですので、あくまでも緑豊かな住宅街といったカタチだけを取り入れてデザインがされています。
田園調布の街並みで特徴的なのが、「田園調布」駅の西口から延びる3本の放射状道路。イチョウ並木となっていて、美しい景観を形作っています。また駅ホームの地下化に伴い復元された、中世ヨーロッパの民家を模した駅舎も街のシンボル的存在となっています。
そして高級住宅街としてのイメージを保ち続ける役割を担っているのが、町会が独自に制定した「田園調布憲章」。建ぺい率・高さ制限・セットバックなどが厳しく規制されたもので、下記はそのほんの一部。建物を建て替えたりする際も、原則これらのルールを守らなければなりません。
・建物の高さは9m、地上2階まで
・土地は165平米を下回らないように
・ワンルームの集合住宅はNG
・駅前と商業地域を除いて、店舗をつくらない
・できれば植栽の石垣を設ける。
・塀を設ける場合は、フェンスまたは柵のみで高さ1.5m以下
ただこれらのルールが景観維持に役立っている一方で、街の新陳代謝を阻んでいたり、相続が発生した際に税金を払えず自宅を手放せざるを得なかったりして、昨今の田園調布では空き家が問題になっていると指摘されています。
時代に合わせて柔軟に考えるべきだ、という声がある一方で、厳しい制限があるからこその美しい景観が保たれているという側面もあり、解決しがたい問題となっています。