約7割の人が生える「親知らず」…抜歯不要なのは約3割
「歯を抜く」というのは、多くの人にとっては避けたい処置かもしれません。「親知らず」という単語をインターネットで検索してみると、「親知らず 抜かない人 何割」「親知らず 生えない人 特徴」「親知らず 抜かない メリット」といったキーワードが出てくることからも、多くの人が親知らずの抜歯に前向きではなさそうな様子がうかがわれます。
日本人のおよそ25〜30%は親知らずが生えないと言われています。
また、親知らずが生えてきた場合、抜歯したほうがよいケースはおよそ70%。斜めに生えていたり、虫歯や歯周病になっていたりする場合です(詳しくは後述)。特に下の親知らずは斜めに生えてくるケースが多いので、抜歯の割合は上の親知らずよりも多いです。
健全な親知らずを抜歯しなくていいケースは、生えている中の30%程度です。そのため、ほとんどが抜歯するということになります。
親知らずを放置するとどうなるのか?
真っ直ぐ正しい方向に生えていない親知らずを放置すると、親知らずの奥まで歯磨きがしにくいため歯垢や歯石などが溜まりやすくなり、歯周病(腫れ、痛み、出血)や虫歯(隣の歯にも広がります)を起こしやすくなります。
親知らずの歯周病(智歯周囲炎)は、腫れや痛みの症状が出ても自然におさまるケースが多いです。しかし、見えない部分に歯石や細菌は残るため、軽度な痛みや違和感が定期的に起こり、気づいたときは歯周病が進行していることもあります。徐々に症状は重度になっていくケースが多いです。
親知らずは歯ブラシが届きにくい場所にあるため、虫歯も早く進行する可能性があります。手遅れにならないうちに治療を受ける必要があるでしょう。斜めに生えた親知らずは頬や舌の粘膜を傷付けやすく、口内炎の原因になりかねません。疲れや睡眠不足、風邪など体調が優れない場合も、一時的な免疫力の低下で、親知らず周囲の歯肉が腫れ、痛みを起こしやすくなります。
抜くべき親知らず、抜かなくてもいい親知らず
抜くべき親知らずは以下の5つのケースです。
①斜めに生えていて、隣の歯が虫歯になっている
②親知らずが大きく虫歯になっている
③何度も親知らずの歯周病(智歯周囲炎)を繰り返している
④親知らずで頬や舌をいつも噛んでしまう
⑤矯正治療のために必要な抜歯
※ただし生えている位置や全身状態により、抜歯をすべきではないこともあります。
一方、抜かなくてもいい親知らずは以下の1ケースのみです。
①真っ直ぐ生えていてしっかり歯磨きができており、虫歯があったとしても軽度で治療により修復できる
抜歯が難しいケースも…クリニック選びは慎重に
親知らずの抜歯において注意する点は以下の場合です。
親知らずの根が下の顎の骨の神経や血管(下歯槽神経及び下歯槽動脈)に引っ掛かっているケースです。この場合CTスキャンにより神経や血管と親知らずの位置関係を診断してから抜歯を行いますが、抜歯により神経を傷つけてしまうと、最悪一生涯顎の皮膚が麻痺してしまいます。また、血管を大きく損傷した場合には大量出血をしてしまい、病院に搬送されるケースもあります。
親知らずの抜歯においてはクリニック選びを慎重にして、信頼できるドクターを選びましょう。
抜くべき親知らずを放置するメリットはない
以上、本稿では親知らずを放置してはいけない理由や、抜くべき親しらず・抜かなくてもいい親知らずについて解説しました。
健康な歯は健康で快適な日常生活を送るための基本です。虫歯で何本も歯を失うと、おいしく食事を取ることができませんし、歯並びの悪さは顎の歪みを生じ、肩こりや頭痛、全身の痛みの原因となります。虫歯や歯周病も全身のさまざまな病気に関わっていることが、最近の研究で分かってきました。
本来抜くべき親知らずを放置したところで、メリットはありません。
まずは現在通っているクリニックで、大学で抜歯をするのかクリニックで抜歯をするのか、しっかり診断を受けましょう。
大木 烈
五反田駅前歯医者 院長、歯学博士