東京・五反田・44階タワマン火災…露呈した「タワマン」の弱さ
一時期、「タワマン=富の象徴」というイメージが強かったですが、最近は一般層がメインの購入者層となっています。超低金利に加え、世帯年収にすると高所得者層という共働き世帯が、立地のよさから「頑張って購入に踏み切る」というケースが増えているのです。
もうひとつ、タワマンを「終の棲家」として選ぶ高齢者層も多いとか。その魅力はやはり立地の良さ。年を重ねるごとに行動は制限されていきますが、たとえば駅直結というロケーションであれば、移動もラクというわけです。また豪華な設備、高層階からの眺望なども、「頑張ってきた自分へのご褒美」として、タワマンを選ぶ動機になっているのだとか。
また年代別にみると貯蓄が最も多い世帯は60代。昨今の日本では、タワマンをなんなく買える層は、高齢者層に限られる、という寂しい現状があるのかもしれません。
【年代別「金融資産保有額(金融資産保有世帯)」】
- 20代:344万円/201万円
- 30代:986万円/400万円
- 40代:1,235万円/531万円
- 50代:1,825万円/800万円
- 60代:3,014万円/1,400万円
- 70代:2,720万円/1,500万円
出所:金融広報中央委員会『令和3年家計の金融行動に関する世論調査』より
そんななか、気になる出来事がありました。東京「五反田」駅近く、44階建てのタワマンで火事、というニュースです。報道によると、火災があったのは18階のベランダ部分。このタワマンには700世帯が住み、400人近い住人が避難したそうです。男女4人が病院に搬送されましたが、幸い、軽傷だったとか。
注目は「避難は諦めました」という高齢者の声。階段での避難は困難と判断し、避難せずにいたとのこと。一般的にタワマンは災害に強い造りをしているので、確かに「避難をしない」というのもひとつの手だったかもしれません。ただ700世帯が住む地域コミュニティとして考えた場合、「避難できずに取り残された人がいた」と考えることができます。
国土交通省『令和3年版国土交通白書』で、災害が多発する日本で顕在化した問題として、「高齢単身世帯の増加による防災力の低下」を指摘しています。高齢者の増加により、地域の災害への対応力が低下しているというのです。
近年、65歳以上の高齢者の単独世帯は増加傾向にあり、さらに都市部では急激に増加していくとされています。そのなかで、コミュニティ機能の低下、避難の遅れ等防災力の低下が懸念されているのです。今回の火災により、都心部のタワマンは「(地域の)防災力が低い」ということが露呈した、という見方ができるでしょう。
今後30年以内に、首都直下型地震が起こる確率は70%といわれているなか、高齢者の防災力が求められています。そのようななか「タワマン」を選ぶことは、リスクといえそうです。
今後、ボリュームが増すのは高齢者。タワマンは増え続けていますが、高齢者が避けるとなるとどうなるでしょうか。タワマンは空き家だらけ……そんな未来が訪れるかもしれません。