コロナ禍で爆増中…「顎関節症」を発症しやすい人の特徴 (※写真はイメージです/PIXTA)

コロナウイルスのパンデミックにより顎関節症が世界的に急増し、アメリカ歯科医師会の集計では歯科医師の69%が顎関節症の症状増加を認識しています。まだまだ予断を許さないコロナ禍では、マスク着用やオンライン対応、ソーシャルディスタンスを意識して毎日を過ごしている人も多いはず。実は、真面目に感染対策に取り組んでいる人ほど顎関節症になる可能性が高くなるとの見解も…。そこで今回は、コロナ禍で「顎関節症」を発症しやすい人の特徴を、日本顎関節学会の専門医の宮本日出先生に解説してもらいました。

「顎関節症」とは?

次の症状のうち、1つ以上あれば顎関節症です。

 

●痛み:顎の関節やその周りの筋肉に痛みがある

●口が開かない:食事がしにくいなど口が十分に開けられない

●音:顎を動かすと顎の関節に音がする

 

ただし、化膿やぶつけたなど他の原因による症状の場合には、顎関節症とは診断しません。

 

顎関節は耳の穴のすぐ前にあります。口を開け閉めするときに指でこの辺りを触ると、凸凹と動くところが顎関節。顎の周りの筋肉はコメカミや頬の後ろのほうにあります。

発症リスクは個人差が大きいが…

顎関節症は顎への負担が顎の許容量を超えると発症します。ペットボトルに例えるなら、ペットボトルのサイズが顎の許容量、顎への負担がペットボトルの中に注ぎ込まれる水です。この水がペットボトルから溢れると顎関節症を発症します。

 

500mlのサイズ(許容量)だと注がれる量が500mlまでは発症せず、501mlになったら発症するのです。顎の関節の許容量に個人差があり、2Lのように大きい人や250mlのように小さい人もいます。つまり許容量2Lの人は容量が大きいので負担が多くあっても顎関節症が発症しにくく、250mlの人は許容量が小さいので負担が少なくても容易に発症します。

 

通常はペットボトルに注がれた最後の負担で溢れ発症するので、これが主原因だと思い込み、この負担を取り除こうと錯覚するのですが、そんな必要はありません。原因のいくつかを改善し、総合的にペットボトルから溢れないようにすれば良いのです。1つの負担だけを完全に取り除くのは難しいですが、いくつかの負担を少しずつ取り除くほうが簡単です。

顎関節症になりやすい人の特徴

コロナ禍で世界的に顎関節症が急増しているのは、感染に対するストレスや感染症対策が顎関節症の原因になるからです。

 

繊細な人ほどストレスを感じやすいと言いますが、そのような人はwithコロナに移行するとソーシャルディスタンスが取れない場合が増えるので感染が気になりストレスに。ストレスがかかると歯ぎしりや食いしばりをする機会が増加し、顎への負担となります。これが癖になると歯がすり減る人もいるのですが、歯がすり減ると歯の長さが短くなり、顎の関節の隙間も狭くなり慢性的な負担に陥ります。

 

リラックスしているときは上下の歯は接していなくて、2mm程度の隙間があります。しかし緊張すると唇を閉じる力が強くなり、上下の歯は軽く噛んだ状態に。これはTCH(歯列接触癖)と言い、この癖が身についてしまうと顎関節症の発症リスクが2倍に跳ね上がります。

 

感染予防をしっかり行う人ほどマスクをする機会が多いのですが、マスクを装着すると息をするのが苦しくなり、息をしやすくしようと無意識に肌とマスクの間に隙間を作るろうとして下顎を前に出す人がいます。この状態は顎の位置がズレ、顎への負担になります。

 

またオンライン生活している人も要注意。パソコンとかスマホ時間が長くなりがちで、操作をするときに猫背になり、これが顎への負担に。通常、姿勢がまっすぐだと顎は頭に対して真下に位置しますが、猫背になると顎の位置が不安定になり顎への負担が増えるのです。

「スリーフィンガー法」で簡単セルフチェック!

コロナ禍ではマスクをしていて口を大きく開ける機会が減るので、顎関節症が悪化してから自覚するパターンが増えています。ですから意識してセルフチェックすることをオススメするのですが、ここで、口が開くかどうかを誰でもすぐ簡単に自分で調べられるオリジナルの方法【スリーフィンガー法】をご紹介します。

 

指1本を「ワンフィンガー」、指2本を「ツーフィンガー」、そして指3本を「スリーフィンガー」として、口を開ける大きさを、指を横にして入れることで確認します。

 

「ワンフィンガー」が入らない場合は、顎関節症よりもっと重い病気になっている可能性がありますから、すぐに口腔外科などの専門病院で診てもらってください。

 

「ツーフィンガー」が入らない状態は急性の顎関節症になっています。早期(発症2週間以内)であればすぐに治る可能性が高いので早目に治療を開始しましょう。

 

「ツーフィンガー」は入るけど「スリーフィンガー」が入らないときは、知らないうちに顎関節症が発症して慢性化しています。治療に時間がかかる可能性があるので、医療機関でよく相談してから治療を始めましょう。

 

「スリーフィンガー」が入れば口を開ける大きさは正常ですから安心してください。

顎関節症を自力で治すには?

前述のように顎関節症の原因となる顎への負担にはさまざまなものがありましたが、多くは日常生活を改善することで取り除くことができます。言い換えると、多くのケースでは自分で顎関節症が治せるということです。

 

ただしTCHや猫背は無意識のうちに行っているので、実は自分で気づくことは難しい。そこで活用して欲しいのが「付箋」と「スマホ」。付箋に「上下の歯を離す!」とか「猫背注意!」などの自分への気づきメッセージを書いて、PCやドア、壁などにベタベタと貼り、付箋を見るたびに自分で意識して改善します。何日も同じ付箋を同じ場所に貼ったままだと見慣れて風景化し気づきが弱くなるので、時々は張り替えて新鮮な気持ちにしたほうが効果的です。またスマホのリマインダー機能を活用して、ときどき注意喚起メッセージを自分に送ると気づきが強くて効果覿面(てきめん)。

 

筋肉が痛い場合は、直接筋肉をマッサージするのも良い方法。お風呂に入るなどリラックスしているときに行うと効果的で、症状のある部位を指で軽く円を描くようにして筋肉をほぐします。「気持ちいい」と感じる程度の力が目安。また筋肉を伸ばすストレッチも効くので、マッサージの後は口をゆっくり大きく開けてください。

 

ただし関節の痛みが強い場合には、口を大きく開ける筋肉ストレッチが逆効果になり痛みがさらに悪化することがあるので要注意。先に薬を飲んだり、症状の程度により関節に注射したりすることもあり、安静が必要なこともあります。

 

ではどうやって自分で見分けるかというと、「痛みや口が開かない症状が3日以上続いた場合」は自分で治すことを試みる前に歯科医院を受診して、まずは診てもらいましょう。

 

顎関節症は生死につながる重い病気ではありませんが、日常生活への支障が大きく他人に理解してもらえないがゆえの辛さもある疾患です。統計的に生涯で2人に1人が顎関節症になりますから、しっかりと対策して安心したいですね。特にコロナ禍の今は急増している顎関節症対策は万全に!

 

 

宮本 日出

歯科医師・歯学博士

幸町歯科口腔外科医院(埼玉県志木市)院長

(社)日本顎関節学会 指導医・専門医

 

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    歯科医師・歯学博士
    幸町歯科口腔外科医院(埼玉県志木市)院長
    (社)日本顎関節学会 指導医・専門医 

    1990年愛知学院大学歯学部卒業後、石川県立中央病院歯科口腔外科入職。

    北陸初の顎関節症造影検査や内視鏡手術を導入、200以上の手術症例を担当する傍ら、症例報告や臨床研究を積み重ね、25歳で論文を発表。28歳でアメリカの一流学会誌『Journal of Oral & Maxillofacial Surgery』に自身の論文が掲載される。

    その後、アデレード大学、明海大学で口腔外科最先端医療の臨床的、基礎的研究に従事し、アメリカ、イギリス、オランダ、ドイツ、オーストラリア、日本で160を超える論文を発表。愛知学院大学では歴代2例目、歯学部では初めてとなる英語論文での歯学博士号の学位を取得。

    明海大学病院顎関節疾患総合診療センター長や明海大学歯学部病態診断治療学講座口腔顎顔面外科第2分野客員講師を経て、2007年埼玉県志木市に幸町歯科口腔外科医院を開業。

    2015年からは埼玉医科大学麻酔科非常勤講師。2017年、立教大学大学院にてMBA取得。多数の臨床関連著書の他、『サンタはなぜ配達料をとらないのか?』(VOICE社)等、仕事論、生きかた論についての著作も執筆。多数の書籍やレクチャー・セミナーが話題を呼び、歯科業界のサンタという異名を持つ。

    【⇒幸町歯科口腔外科医院HP】
    【⇒宮本日出 お口の「とくダネ!」チャンネル】

    著者紹介

    連載現役医師が解説!様々な「カラダの不調」への対処法

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