医師や弁護士、エリートサラリーマン……いわゆる「高所得者」と呼ばれる人たちでも、引退後に資産が底をつき、最悪の場合、老後破産に陥ってしまうことがあります。多くの所得を得ているにもかかわらず「いつのまにかお金がない」という人の共通点と、対策をみていきましょう。

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高収入でも「老後破産」に陥る3つのワケ

2019年、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書が発端となり、「老後資金2,000万円問題」が話題になりました。

 

ただし、2,000万円はあくまでも平均的な数字であり、豊かな老後生活にとって重要なのは「収支バランス」です。収支バランスを崩すと老後破綻のリスクが高まります。

 

それでは、高所得者が収支バランスを崩す要因として、どのような理由が挙げられるのでしょうか。

 

税金と社会保険料が高い

老後破綻リスクを高める要因としてまず挙げられるのは、高額な税金と社会保険料です。

 

国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査結果』によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は433万円でした。高所得者は平均を大きく上回る収入を得ている一方、支払う税金や社会保険料も高額となります。

 

また、所得が増えることで健康保険や厚生年金も高くなることから、税金対策などを実施しない場合、実際の手取り額は総支給額から大幅に減少してしまうのです。

 

居住地域にもよりますが、一般的には税込み年収1,000万円の方の手取り額は700万円~800万円程度といわれます。

 

そのため、手取り額を意識せずに生活を送ると「思ったよりも手元にお金が残らない」という状況が生まれてしまうのです。

 

各種手当の対象外になりやすい

また、国などが設けている補助金の所得制限により、高所得者は補助金の対象外になりやすいということも収支バランスを崩す一因です。

 

たとえば中学校卒業までの児童を養育している人に支給される児童手当は、収入額がおおむね800万円を超えると対象外になるケースがあります。児童手当は、養育者の収入が多くても、児童1人あたり月額一律5,000円は支給されることになっていますが、受け取る金額が少なくなることに違いはありません。

 

また、高校生に支給される高等学校等就学支援金は、親の年収が約910万円を超えると対象から外れてしまいます。このように国の補助金が支給されないため、他の家庭と比べて補助金による収入が少ないのです。

 

一度上げた生活水準を戻せない

なお、税金や保険料、各種手当など国の仕組み以外に、「現役時代の生活水準を下げられない」という理由も老後破綻を引き起こす人の特徴として挙げられます。

 

周りのライフスタイルにあわせて高額な家や車を所有したり、子供の塾や習いごとに多額の費用をかけたりすることにより、十分な貯蓄をおこなえないまま老後を迎えてしまう人も少なくありません。

 

たとえば現役時代に年収が1,200万円あった人は、月に60万円の支出であれば問題なく生活していけますが、定年後、公的年金と企業年金だけになったとしたら、収入はぐっと減ってしまいます。

 

年収が3分の1に減って400万円だとすれば、月額は約33万円。ところが支出も3分の1に減らすのは、かなり難しいものです。現役時代と同じように60万円で暮らしたならば、毎月27万円の赤字が出てしまい、老後資金が6,000万円あったとしても、19年ほどしかもちません。

 

65歳からだと84歳の時点で、老後資金が底をついてしまう計算です。途中で資金が枯渇しては困るので仮に95歳まで生きると仮定すると、65歳から95歳までの30年分の老後資金を準備したいならば、約1億円が必要になります。

 

このように、住宅や車のローン、子供の教育費、交遊費等に加えて、税金や保険料による支出が多いこと、各種手当の対象になりにくいことなどにより、いくら高収入であっても対策を施さなければ老後破綻に陥る可能性は十分にあるのです。

 

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本記事は、「医療と生きる人々が、生の情報で繋がる」をコンセプトにシャープファイナンス株式会社が運営する医療プラットフォーム『Medical LIVES』のコラムより、一部編集のうえ転載したものです。