嬉しい返礼品で人気のふるさと納税ですが、利用率は1割で、圧倒的に「利用していない」の割合が高くなっています。なぜなのでしょうか。ニッセイ基礎研究所の岩崎敬子氏によるレポートです。
ふるさと納税をしない理由 (写真はイメージです/PIXTA)

4―ふるさと納税をしない理由

それでは、多くの人がふるさと納税をしない理由は何なのか。2020年のふるさと納税をしなかった人を対象に、ふるさと納税をしなかった理由を尋ねた回答の分布を、性/年齢層別に確認したのが図3、年収別に確認したのが図4である。図3に示されるように、ふるさと納税をしない理由として全体で最も大きな割合を占めたのは、「仕組みやメリットについて、よく知らないため」だった。年齢層別に見ると、男女ともに、「仕組みやメリットについて、よく知らないため」を選んだ人の割合が最も大きい年齢層は30代で、最も小さい年齢層は60代だった。また、「仕組みやメリットについては知っており、やりたいと思っているが、手続きが面倒なため」という人も各性別年齢層で約2割確認された。

 

【図表3】ふるさと納税をしない理由 (男女/年齢層別)

 

さらに、図4は、年収別にふるさと納税をしない理由の分布を示したものである。年収が700万円未満の人の間で最も選択された理由は「仕組みやメリットについて、よく知らないため」である一方、年収が700万円以上の人の間では、「仕組みやメリットについては知っているが、必要性を感じないため」の割合が最も大きく、「仕組みやメリットについては知っており、やりたいと思っているが、手続きが面倒なため」の割合が次に大きい。所得が高い人は納税額も大きいため、こうした仕組みやメリットについて調べている可能性が示唆される。

 

【図表4】ふるさと納税をしない理由 (年収別)

 

5―おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所の独自のアンケート調査から、人々がふるさと納税をしない理由を確認した結果を紹介した。本調査からは、人々のふるさと納税を行わない最も大きな理由は、「仕組みやメリットについて、よく知らないため」で、ふるさと納税を行わなかった人の約4割が選択した。ふるさと納税を行った人を含めた全体から見ると、約4分の1の納税者が、仕組みやメリットについてよく知らないためにふるさと納税を行っていないということになる。ふるさと納税という言葉の認知率は高いが、制度の仕組みやメリットについてはまだほとんどの人に知れ渡っているとは言えないのかもしれない。

 

 

岩﨑 敬子

ニッセイ基礎研究所