70代でも住宅ローンの残債が…珍しくない「ローン地獄」から抜け出せない高齢者
月々15万円程度の返済。首都圏に住む世帯の住居費と考えれば、「それくらいは普通」といったところでしょうか。問題は、返済完了のタイミング。73歳。最近は元気な高齢者も多いですから、まだまだ現役で働いている可能性も高いでしょう。法改正で「70歳定年制」が努力義務となっていますから、隠居しているほうが珍しいかもしれません。
仮に男性大卒の会社員だとしましょう。40代前半の平均給与は月44万3,600万円(手当込み)で、手取りにすると月33万円ほど。推定年収は687万円で、給与のピークは50代前半で869万円。50代後半でも800万円台をキープしますが、60代に突入すると、500万円台に。多くの企業が60歳定年制とし、以降は再雇用のカタチをとっています。役職も変わりますので、およそ3割の給与減は覚悟しておかないといけません。
40代、50代で月々15万円の返済と60代以降の15万円の返済。60代で返済負担率(税込年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合)は大きく増えます。そのことを見越して、綿密な返済プランを考えておく必要があるのです。
「退職金で一括返済するから大丈夫」
そんな考えの人も多いでしょう。大企業での退職金はおよそ2,000万円といわれていますから、たとえば前述の例で残金2,000万円を切るのは228ヵ月後、つまり19年後です。退職金をもらう前後なので、確かに「退職金でローン地獄から解放」は現実的だといえるでしょう。ただ老後のための資金、退職金をあてにしている場合は、退職金で一括完済は難しくなります。
厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金の平均年金受給額は月額5万6,358円、厚生年金の平均受給額は月額14万6,145円。夫婦で年金20万円程度で、足りない分は貯蓄を取り崩して補うのが一般的です。
43歳でマンションを購入し、73歳までローン返済に追われているとしたら、いつ、老後を見据えた貯蓄が行えるでしょうか。収入がピークとなる50代でしょうか。しかしこのタイミング、子どもの教育費など支出も多く、思うようにお金が貯まらないといった時期の可能性が高いのではないでしょうか。
子育ても落ち着いた60代に入ってから……このタイミングでは収入減となり、ここでも思うようにお金が貯まらない可能性が高いでしょう。
お金の貯めどきを逃し、あれよこれよと、貯蓄ゼロの状態で年金生活スタートというのは、レアケースではありません。ローン返済があっては年金だけの生活は難しいでしょうし、ローン返済が終わっていても、貯蓄ゼロでは老後生活は立ち行かなくなります。
ローン返済が70代になる。そんなプランはいまどき珍しいことではありません。ただ実際に70代で住宅ローンの残債がある場合は、老後破産のリスクが高まります。年金生活に突入する前に返済は終わっていることが、老後破産を防ぐ条件。また。そもそも老後を見据えたお金の貯めどきをしっかりと見据えた返済プランを、最初から考えておくことが重要なのです。