どこで誰の立会いがあったか…プライベート出産の実際
プライベート出産について、2015年から2016年にかけて、全国で30名の体験者にインタビューを行いましたので紹介します。
まず、彼女らがどこで誰の立会いのもとに出産した経過を経て、プライベート出産を行うに至ったのかという出産場所の変化の過程について、第1子からプライベート出産したか否か、病産院の出産を経たか否か、助産所の出産を経たか否か、助産師の立会いによる自宅出産を経たか否か、意図的ではない無介助分娩を経たか否かを区別し示したところ、10通りのパターンがありました。
まず、第1子からプライベート出産した人は13名で、「プライベート出産のみ(パターン①)」12名、「プライベート出産→意図的ではない無介助分娩→助産師の立会いによる自宅出産(パターン②)」1名でした。
病産院での出産を経てプライベート出産した人は11名で5つのパターンがあり、「病産院→プライベート出産(パターン③)」が7名と最も多く、他に「病産院→助産所→プライベート出産(パターン④)」、「病産院→助産師の立会いによる自宅出産→プライベート出産(パターン⑤)」、「病産院→プライベート出産→助産師の立会いによる自宅出産(パターン⑥)」、「病産院→意図的ではない無介助分娩→プライベート出産→病産院(パターン⑦)」が、それぞれ1名でした。
病産院の出産を経ず、助産所での出産や自宅で助産師の立会いによる出産を経てプライベート出産した人は5名で、その内「助産所→プライベート出産(パターン⑧)」4名、「助産所→助産師の立会いによる自宅出産→プライベート出産(パターン⑨)」1名、「助産師の立会いによる自宅出産→意図的ではない無介助分娩→プライベート出産(パターン⑩)」1名でした(図表)。
経験者30名「出産回数」の平均は3.1回
30名の出産回数の平均は3.1回で、近年の合計特殊出生率が1.4前後(2019年は1.36)で推移していることからすると、彼女らは多産と言えます。そして30名によるプライベート出産回数の合計は55回で、平均1.8回行われています。
55回のプライベート出産の内、行われた場所は自宅が52件(94.5%)と大半を占めています。
そして、プライベート出産への夫の立会いは49件(89.1%)、子どもの取り上げも44件(80%)は夫が行っています。自分で取り上げた出産は7件ありました。出産時の姿勢は、最も多いのが四つん這い(しゃがみ・膝立ち含む)で32件(58.2%)、その他、立位4件、側臥位2件、仰臥位4件、水中出産9件、不明4件でした(表)。
書籍や体験談などで知識を仕入れている妊婦が多い
彼女らは、他のプライベート出産体験者から体験内容を聴く、書物を読む、あるいはインターネットなどで情報を収集し、準備を整え出産に臨んでいました。最も多く読まれていた本は『あなたにもできる自然出産――夫婦で読むお産の知識』です。
この本はプライベート出産に臨むための具体的な対処方法が書かれており、ガイドブックとして活用されていました。次に多く読まれていたのは、『自然に産みたい――5人の子供を自宅出産した記録』でした。
そして、アクティブ・バースに関する本としては、ジャネット・バラスカス著『ニュー・アクティブ・バース』、ミシェル・オダン著『バース・リボーン――よみがえる出産』、大野明子著『分娩台よ、さようなら――あたりまえに産んで、あたりまえに育てたい』などが読まれています。
ジャネット・バラスカスは、『ニュー・アクティブ・バース』の中で、アクティブ・バースは、本能的なお産だということと、自分の意志と決断で自然に自発的に子どもを産むことや、自分の思うままに体を動かしたり、内面の衝動に従うことを大事に考え、「起き上がった姿勢の方が、母親にとっても、赤ちゃんにとってもよい」と説明しています。彼女らは上体を起こした姿勢で出産しており、この考えのもとに出産していたことがわかります。
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市川 きみえ
助産師
清泉女学院大学大学院看護学研究科・助産学専攻科・看護学部看護学科 准教授
1984年大阪市立助産婦学院卒業。大阪市立母子センター勤務の後、医療法人正木産婦人科にて自然出産・母乳育児推進に取り組み、2011 年より助産師教育・看護師教育に携わっている。2010年立命館大学大学院応用人間科学研究科修士課程修了 修士(人間科学)。2018年奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了 博士(社会科学)。2021年より現職。
著書に『いのちのむすび─愛を育む豊かな出産』(晃洋書房)がある。