収入が多い共働き「パワーカップル」が陥る落とし穴
共働きのほうが黒字も多くなると考えるでしょう。ただ共働き率と黒字率の相関係数は0.27と、相関関係があるとはいえない水準です。共働きでも片働きであっても消費指向はそれぞれなので、一概に共働きだからといって貯蓄が多いとはいえないのです。
たとえば「和歌山県」。共働き率47位ですが、黒字率は3位です。家計管理を工夫する、消費を抑えるなどで、片働きであっても十分に資産形成を進めることはできます。
もちろん共働きだと、その分インカムが多く、生活費、子どもの教育費、住宅費など、多めに支出できる傾向にあることは事実。資産形成も余裕をもって進めることができそうです。
ただ気をつけたいのが、昨今、耳にする機会が増えた「パワーカップル」。夫婦働きで世帯年収700万円以上とか、1,000万円以上だとか、その定義はさまざまですが、ダブルインカムゆえ世帯年収は平均以上で、消費旺盛というのは共通しています。
この旺盛な消費がどこに向かっているのか……一例に挙げられるのが「タワーマンション」です。以前は東京都心の湾岸部などに建てられ、億ションが当たり前、購入できるのは富裕層だけというのが一般的でしたが、徐々に郊外にも建てられるようになると、そのプレミアム感は薄れることに。富裕層には見向きされなくなります(税制上のメリットがあり、購入に至るケースは見られますが)。そんな現在のタワマンの購入者が、パワーカップルだというのです。
たしかに「街を見下ろす高層階の暮らし」というのは、多くの人が一度は憧れること。そんな生活が「頑張れば手に入る」となると、余裕のあるパワーカップルであれば何とかしようと考えるのも当然かもしれません。
長い間、「住宅購入は年収の5倍まで」といわれてきました。5倍を超えると、一般的にローンによって家計が逼迫するとされてきたからです。また金融機関からの借入可能額は年収の5~7倍とされてきましたが、昨今は、年収の7~10倍が目安といわれています。世帯年収1,000万円を超えるパワーカップルであれば、億ションを買えるだけの融資は、年齢などの諸条件にもよりますが、問題ないといえるでしょう。
仮に当初金利0.6%、5年目以降は1%で、30年の住宅ローンを利用したとしましょう。月の返済額は5年目までは30万3,596円、5年目以降は31万8,674円となります。返済負担率35%までといわれていることを考えると、年収1,100万円以上であれば十分に借入可能です。
こうして少し背伸びしてタワマン購入。その後の生活が堅実なものであればいいのですが、そこは消費旺盛なパワーカップル。“タワマン民”にふさわしいライフスタイルを追求し、収入の分だけ消費するというライフスタイルは、なかなか変えることはできないでしょう。どんなに家計に余裕があろうと、どこかで老後を見据えて資産形成を考えなければなりません。いつまでも「消費旺盛なパワーカップル」でいると……その先に待ち受ける未来が悲惨なものになることは、想像に難しくないでしょう。