定年後の生活が見えてくる50代。教育費や住宅ローンの目途もつき、年金生活を見据えて貯蓄にはげむ年代です。順調に資産を形成していった先には、幸せな老後が待っているのでしょうか。みていきましょう。
定年後に待っていたのは「親の介護」でした…自由な老後を夢見た、会社員の憂鬱 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金は十分でも自由な暮らしがあるとは限らない

65歳で手にする年金は1人平均14万4,064円。この年金と先ほどの貯蓄額で悠々自適な老後が暮らせるのかどうかは、評価が分かれるところですが、何かと大変だった会社員人生から解放され、「やりたいことをやるぞ!」と息まいている人も多いことでしょう。

 

【年齢別「老齢年金平均月受給額」】

60歳 9万1,304円

65歳 14万4,064円

70歳 14万7,292円

75歳 14万7,957円

80歳 16万0,073円

85歳 16万2,964円

90歳 16万1,044円

 

出所:厚生労働省『令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より

 

もちろん、予定通り、思い描いていた悠々自適な老後を手にする人もいます。ただそうはいかない人も多いのが現実です。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第8回世帯動態調査』によると、65歳以上の高齢者からみてさらに高齢の親が生存している場合、同居している割合は23.4%。昨今、核家族化・小家族化の進展で、親と離れて暮らす傾向は高齢者の間でも広がり、4年前調査から3ポイント近く低下。また男女別では男性の方が親との同居割合が高い傾向があるといいます。

 

減少傾向にあるとはいえ、親が存命の場合、65歳以上でも5人に1人は親と同居しているというのが現実です。定年を迎えた子どもの親と考えると、80代後半よりも上の世代が多いと考えられます。そのような親とともに「悠々自適な老後を!」とはいきません。

 

要介護者の発生率は加齢とともに急速に高まり、80~84歳では27.0%、85歳以上では59.3%と過半数。また高齢者の方が、要介護になった際、介護を依頼したい人として「子」と回答した人は男性で12.2%、女性で31.7%ほどいます**

 

介護費用をどのようにまかなうか聞いたところ、多くが「年金」や「貯蓄」と答えています。一方で「子などの家族・親戚からの経済的な援助を受けることになると思う」と回答した人が、80歳以上で6.8%ほどいました**

 

*厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』、総務省『人口推計月報』より

**内閣府『令和3年版高齢社会白書』より

 

多くの人が定年を迎える60代。高齢化の進行で、親はまだまだ元気という年齢ですが、急激に要介護率が高くなる時期でもあります。現在は多数派ではありませんが、思い描いた老後が泡のように消えてしまうという人も、今後は増えていくでしょう。

 

50代。自分たちの老後だけでなく、親の介護についても真剣に考えておくほうが得策だといえそうです。