新型コロナウイルス感染拡大の影響で、教育現場ではリモート授業の導入が進んでいます。本記事では、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら「海外教育」の研究を続ける、本柳とみ子氏の著書『日本人教師が見たオーストラリアの学校 コアラの国の教育レシピ』より一部を抜粋・再編集し、コロナ禍以前からリモート授業を積極的に取り入れていた、教育先進国である「オーストラリア」の教育現場について紹介していきます。
教育先進国「オーストラリア」…日本の学校教育との究極の違いとは?【教育学博士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

授業は一斉指導よりも「個人指導」の割合が多い

オーストラリアでは教師が一方的に「教える」という授業は少ない。授業は一斉指導と個人指導で構成されるが、後者の割合がはるかに多い。最初に教師が説明したあと、生徒が個人でワークシートに取り組んだり、グループで活動したりするパターンが一般的だ。

 

一斉指導も、教師と生徒、あるいは、生徒同士のインタラクションで進められる。教師がひたすら話し、それを生徒が黙って聞くということはほとんどない。生徒もよく発言する。躊躇することなく自分の意見を言い、反論もする。概して自分の考えを発表したがるようだ。

 

授業の大半は生徒の活動で、先生は必要に応じてアドバイスする黒子のような存在だ。

教師の質問「なぜそう思うの?」が生徒にもたらす影響

教師は、「What do you think?(どう思うか)」「Why do you think so?(なぜそう思うのか)」という質問をよくする。正解を問うのではなく、生徒の考えを聞く。さらに、考えに至った経緯や、なぜそのように考えたのかと理由も聞く。

 

教師の質問は発想を広げるようなものが多い。知識そのものよりも、知識を得る方法に重点が置かれた授業が多い。知識は生徒が自分の力で得るものなのだ。ただし、知識を得ることは暗記することではない。オーストラリアの生徒が暗記する姿はほとんど目にしたことがない。日本の生徒が使っている暗記用の透明シートやペンも見たことがない。

 

教師も「覚えなさい(Remember)」とは言わず、ひたすら生徒に考えさせる。勉強のしかたやわからないときの対処法も教える。わからないことはどんどん言わせ、恥ずかしいことだと思わせない。そして、どうすればわかるようになるかアドバイスする。答えは言わずに自分で考えさせる。知識を詰め込む教育方法は過去のものになりつつある。

 

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教育学博士
本柳 とみ子


公立中学校で26年間教鞭をとったあと、大学院で海外の教育について研究を始める。その後、慶應義塾普通部、東京海洋大学、早稲田大学等で非常勤講師をしながら研究を続ける。2012年、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)