先住民の街「イヌビク」にサケが無かった衝撃の理由
イーグルプレインズで1泊し、その次の日は、ペリークロッシングの村のモーテルに泊まった。ノースウェストテリトリーズからユーコンテリトリーに入ると、気温があがり、太陽も明るくなる。
ペリークロッシングのガソリンスタンド兼売店の前で座っていると、ひとりの男が声をかけてきた。タッチョーネだといった。先住民の一部族だった。
「来月になるとサケが遡上してくる。三波に分かれてあがってくるんだ。それはすごいよ。でもね、資源保護の目的で漁獲量は厳しく制限されているんだ」
「捕ったサケは売るんでしょ」
「政府が全部買っていく」
イヌビクのスーパーにサケがないのはそのためかもしれなかった。
「環境を守ることは大切だからね」
話していると、山から銃声が聞こえた。猟をしているようだった。彼の体がぴくッと動いた。彼は先住民だった。
総費用は24万8683円もかかってしまった。30年前に比べ、ガソリン代やレンタカー代があがり、ホテル代も2倍以上に値あがりしていた。これが堪えた。
下川 裕治
旅行作家