飛行機代、宿代、食事代…旅にかかる費用すべてを含めて「12万円」で世界を歩く。下川裕治氏の著書『12万円で世界を歩くリターンズ タイ・北極圏・長江・サハリン編』(朝日新聞出版)では、その仰天企画の全貌が明かされている。本連載で紹介するのは北極圏編。30年ぶり2度目の大自然にはなにが待ち受けているのか!?
(※写真はイメージです/PIXTA)
「陸の孤島になる?」ホテルのスタッフから意外な答え
「もしそうなら、この先にあるフォート・マクファーソンやイヌビク、トゥクトヤクトゥクは、その間、陸の孤島になるってこと?」
「そうですよね」
その夜、イヌビクのホテルで確認してみた。その通りだった。陸路輸送での物資は届かないのだという。頼りは飛行機だけになってしまうようだった。日本なら、その期間も考えて橋をつくるような気がした。
しかし、イヌビクのホテルのスタッフは、その状況になんの疑問ももたないようだった。それが北極圏の流儀だといっているような気もした。ホテルの女性スタッフは、こう続けた。
「その間に、サケが遡上するんですよ」
「サケ?」
そういうことだったのか。サケは生まれた川に戻ってくる。しかし戻る時期まで遺伝子に組み込まれているということなのだろうか。水温に反応するのかもしれなかった。
下川 裕治
旅行作家