医師である梶川博氏・森惟明氏の著書『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法』より一部を抜粋・再編集し、脳梗塞における初期症状、診断・治療、予防法について紹介していきます。
貧血だと思っていたが…立ちくらみに隠された「重篤な病気」の正体【医師が解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

「最近、しゃべりにくいな」と思っていたら…

言語障害(しゃべりにくい)は、失語症(運動失語、感覚失語など)、構音障害、構語障害、発音・発語障害などに分類されます。

 

言語中枢は、大脳のブローカ(Broka,1824-1880)運動言語中枢(前頭葉)と、ウェルニッケ(Wernicke,1848-1905)感覚言語中枢(側頭葉)があります。この両者は弓状束を介して結合し、これらの上位に概念中枢があって、言語の音響像の記憶が一定の概念と結合して、言語や文章の意味を理解します。

 

言語活動は、「聞く」、「話す」だけでなく、「読む」、「書く」を加えた4要素からなっています。「音読」の際に発音に誤りがあると「錯読」といい、文字を理解できないのを「失読」といいます。また手の運動障害はないのに文字が書けないのを「失書」といいます。

 

おおまかには、失語症は優位側の前頭葉・側頭葉の障害を考えます。右利きの人では左脳に言語中枢がある確率が高く、左利きでは右脳にある場合と左脳にある場合とがあります。構音障害などは脳幹・小脳の病変を考えます。これら脳疾患以外に顎、口腔、歯牙、咽喉頭、声帯などの病変が構音障害などの原因となり得ます。

 

「しゃべりにくさ」を来す疾患は、下記の通りです。

 

①脳血管障害(大脳半球や脳幹部の脳卒中)

②パーキンソン病

③球麻痺(筋委縮性側索硬化症、重症筋無力症、多発性硬化症、ギラン・バレー
症候群)

④小脳疾患(不明瞭、とぎれとぎれ、緩慢、不規則な言語)

⑤口腔内障害(シェーグレン症候群/唾液分泌低下、舌炎、歯科・耳鼻咽喉科疾患)

⑥開口障害(破傷風、深頸部感染症、石灰沈着性頸長筋腱炎)

 

その「しゃべりにくさ」、もしかすると病気のサインかもしれません (画像はイメージです/PIXTA)
その「しゃべりにくさ」、もしかすると病気のサインかもしれません
(画像はイメージです/PIXTA)