もし「丁寧にお断り」していたらどうなっていたか
当機構は、「住まいを紹介し、生活保護の申請を手伝って、それでおしまい」ではありません。何年でも、何十年でも、一度相談してくれた人に関しては、連絡をくれればとことん面倒を見ます。
「そんなことをして、何の得があるんですか?」とよく聞かれますが、こればかりは「得なんてありません」としか答えようがありません。
家族や友だちに相談できる人は、それだけで恵まれています。我々の元に相談に来る。それはもう、「ほかに相談できる人が誰もいない」からこその行動なわけです。
もし我々が、かつて私が勤めていた不動産会社のように、相談に訪れた人に対して「丁寧にお断り」して帰っていただいたり、「もう住まいも紹介したし、生活保護の申請も手伝ったでしょ」と関係を切ったりしたら、どのようなことが起きるか。
将来を悲観して自殺を選ぶかもしれませんし、お金に困って犯罪を働くかもしれません。だから、相談者に明らかな「悪意」が見えない限りは、とことん、相談を受け続けます。
坂本 慎治
NPO法人生活支援機構ALL 代表理事
大阪居住支援ネットワーク協議会 代表理事
株式会社ロキ 代表取締役
※本連載で紹介している事例はすべて、個人が特定されないよう変更されており、名前は仮名となっています。