生活困窮者の相談に乗り、生活保護の申請を手助け、住まいを紹介するNPO法人・生活支援機構ALL。「困っている人は誰でも、門を叩いてほしい」と代表理事の坂本慎治氏は語る。活動を始めたきっかけには、不動産会社で働いていたころの壮絶な原体験があった。 ※本連載では書籍『大阪に来たらええやん!西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)より一部を抜粋・編集し、日本の悲惨な実態に迫っていく。
3日間野宿「DV男から逃げてきた母子」…不動産会社たらい回しの悲惨 (※画像はイメージです/PIXTA)

もし「丁寧にお断り」していたらどうなっていたか

当機構は、「住まいを紹介し、生活保護の申請を手伝って、それでおしまい」ではありません。何年でも、何十年でも、一度相談してくれた人に関しては、連絡をくれればとことん面倒を見ます。

 

「そんなことをして、何の得があるんですか?」とよく聞かれますが、こればかりは「得なんてありません」としか答えようがありません。

 

家族や友だちに相談できる人は、それだけで恵まれています。我々の元に相談に来る。それはもう、「ほかに相談できる人が誰もいない」からこその行動なわけです。

 

もし我々が、かつて私が勤めていた不動産会社のように、相談に訪れた人に対して「丁寧にお断り」して帰っていただいたり、「もう住まいも紹介したし、生活保護の申請も手伝ったでしょ」と関係を切ったりしたら、どのようなことが起きるか。

 

将来を悲観して自殺を選ぶかもしれませんし、お金に困って犯罪を働くかもしれません。だから、相談者に明らかな「悪意」が見えない限りは、とことん、相談を受け続けます。

 

 

坂本 慎治
NPO法人生活支援機構ALL 代表理事
大阪居住支援ネットワーク協議会 代表理事
株式会社ロキ 代表取締役

 

※本連載で紹介している事例はすべて、個人が特定されないよう変更されており、名前は仮名となっています。