正社員なら安泰、というのは過去の話
このように見ていくと、正社員と、正社員ではない人の給与格差は大きく、雇用形態の多様化が進んでいるとはいえ、多くが正社員を目指すのは無理のない話かもしれません。
しかし正社員だからといって安泰かといえば、そうとも言い切れません。同調査で月収(所定内給与額)の分布を見ていくと、13%が20万円未満という結果に。
【正社員の月収の分布】
20万円未満 13.0%
20万~22万円未満 8.8%
22万~24万円未満 9.5%
24万~26万円未満 9.3%
26万~28万円未満 8.4%
28万~30万円未満 7.2%
30万~32万円未満 6.3%
32万~34万円未満 5.2%
34万~36万円未満 4.5%
36万~38万円未満 3.9%
38万~40万円未満 3.2%
40万円以上 20.7%
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』
少数の高給取りの正社員の存在により見えにくくなっていますが、正社員であっても決して楽ではない、というのが現状。「正社員になれば……」の先には、夢も希望もありません。
日本では「低所得者の割合」が減っているが…
OECDによる調査で、「常勤雇用者の低所得者比率」*を見ていくと、主要40ヵ国中、最も比率が高いのは「米国」で23.38%。先進7ヵ国では「カナダ」20.68%で第7位、「イギリス」が18.10%で12位、「ドイツ」が17.64%で13位、「フランス」が7.74%で34位、「イタリア」が3.71%で39位。では「日本」はというと、11.79%で26位。世界的にみて、日本は低所得者層が少ない国だといえます。
*常勤雇用者の平均所得の中央値の2/3に満たない所得
【主要国「常勤雇用者の低所得者比率」ワースト10】
1位 米国(23.4%)
2位 イスラエル(22.4%)
3位 ラトビア(21.9%)
4位 リトアニア(21.6%)
5位 ポーランド(21.1%)
6位 ルーマニア(20.8%)
7位 カナダ(20.7%)
8位 ブルガリア(20.4%)
9位 ハンガリー(20.3%)
10位 チェコ(18.4%)
出所:OECD
また日本の低所得者の比率はバブル後期の1990年には17.62%でしたが、2000年には14.58%と徐々に低下しています。
ーー日本では貧困化が進んでいるとよく言われるけど、そんなことないのでは
これらの結果から、そう思った人も多いでしょうが、ここで1つの落し穴があります。「日本では給与が上がっていない」という事実です。
国税庁『民間給与実態統計調査』によると、1990年会社員の平均年収は425万2000でしたが、その後、バブル崩壊。それでも会社員の給与はあがりつづけ、1997年には467万3000円に達します。しかし統計上、会社員の平均給与のピークはここ。その後、会社員の給与は1997年の水準を一度も超えることはなく、最新調査である2019年は436万4000円。ピーク時から7%減、ということ。
つまり日本では「みんな一緒に貧乏になった」が正解だということです。
正社員でも半数が月収20万円未満。あがることのない給与……明るい未来が見えない日本で、いかにして生きていくか。コロナ禍のように、未曽有の危機に見舞われることもあります。万が一に備えてできることといえば、可能な範囲で資産形成を進めていくことしかなさそうです。