ストレスは少ないのはいいけど、給与面ではやはり正社員が羨ましい
新型コロナウイルスの流行拡大による最初の緊急事態宣言以降、リモートワークが続くという都内在住の46歳、男性派遣社員。いわゆるロスジェネ世代で、浪人・留年の末、大学を卒業したのが2000年と、最も就職が厳しかった年でした。
――希望する業種で内定が出ずに、妥協して就職する人、あえて留年する人、フリーターとして社会に出る人……当時は、大卒でも普通でした。私は希望する会社からは内定が出ず、なんとか内定が出た会社に就職をしました。
しかし最初に就職した会社を8ヵ月で退社してしまったといいます。
――いわゆるブラック企業で、仕事が深夜までかかることは珍しくありませんでした。給料はよかったのですが、絶えることはできませんでした。
初めて就職した会社を退職して、再度、正社員として就職を目指しますが、なかなかうまくはいかず、派遣社員として働くように。リーマンショックのとき、世間では「派遣切り」という言葉が流行しましたが、幸い、職を失うことはありませんでした。ある意味、順風満帆な派遣社員生活を送ってきたといいます。
――正社員として働いていても、いつ何があるのか分からない時代です。派遣社員でも正社員でもあまり関係ないかもしれませんね。責任をもって仕事とは向き合っていますが、会社に忠誠を誓わなくてもいいので、正社員の皆さんより、ストレスなく働けているかもしれません。
そういうものの、「正社員として働きたかった」という思いはあるようです。その一番の理由は、はやり給料。
――正社員よりも不安定というのはあり、「いつまで派遣社員でいるつもりだ」と親には心配されるし、「給料が安い」ということで、お付き合いしていた方と別れたことも。この年齢ですし、結婚は諦めていますが……。
厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、大卒の男性正社員の場合、20代前半で335万4000円だった平均年収は年齢とともにあがっていき、50代前半で882万7000円とピークに達します。
一方、同じ大卒男性でも派遣社員の場合はどうでしょう。20代前半で295万1000円だった平均年収は、正社員と同様、年齢とともにあがってき、50代前半で531万1000円とピークに達します。
【大卒男性正社員の平均年収推移】
20~24歳 335万4000円
25~29歳 444万1000円
30~34歳 530万3000円
35~39歳 618万8000円
40~44歳 695万6000円
45~49歳 769万1000円
50~54歳 882万7000円
55~59歳 855万2000円
60~64歳 651万2000円
【大卒男性派遣社員の平均年収推移】
20~24歳 279万6000円
25~29歳 350万2000円
30~34歳 355万8000円
35~39歳 378万400円
40~44歳 419万4000円
45~49歳 394万1000円
50~54歳 436万8000円
55~59歳 437万0000円
60~64歳 472万4000円
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』
※「正社員・正職員以外のうち、雇用期間の定め無し」の数値を採用。厳密に派遣社員のみの数値ではないことに留意が必要
正社員との年収格差は、20代前半は40万円ほどだったのが、50代前半では350万円にも達します。
もちろん、これは統計の平均値で比べたもので、正社員よりも年収が上の派遣社員もいます。同調査で40代男性の派遣社員の給与分布を見てみると、月収60万円超が約9.5%もいるのです。しかし月収20万円未満が約32%と、「派遣社員=低収入」が一般的であり、正社員と派遣社員の年収格差もかなりものと、というのが現状だといえるでしょう。