低所得者の割合は減っているが、平均年収自体が増えていない
このように見ていくと、「いつの時代でも一定数、貧困層はいるだろうが、貧困化が進んでいるというのは言い過ぎでは……」と言いたくなりますが、ここでひとつ、落し穴があります。それは「日本人の所得は、この30年で増えていない」という事実です。
国税庁『民間給与実態統計調査』によると、1990年の会社員の平均年収は425万2000円でした。その後、バブルが崩壊。1995年の平均年収は457万2000円。2000年には461万0000円に達します。バブルは崩壊したとはいえ、90年代は10年で8%弱、年収は増えていたのです。
しかし2000年代に入ると、会社員の平均年収は前年比割れを連発。2013年以降はアベノミクス効果で前年比プラスを続けてましたが、2000年代初頭の水準まで戻らず、最新の2019年調査では436万4000円となっています。
【日本の会社員の年収の推移】
1990年 425万2000円(105.7%)
1995年 457万2000円(100.4%)
2000年 461万0000円(99.9%)
2005年 436万8000円(99.5%)
2010年 412万0000円(101.5%)
2011年 409万0000円(99.3%)
2012年 408万000円(99.8%)
2013年 413万6000円(101.4%)
2014年 415.0万円(100.3%)
2015年 420.4万円(101.3%)
2016年 4216万円(100.3%)
2017年 432.2万円(102.5%)
2018年 440.7万円(102.0%)
2019年 436.4万円(99.0%)
出所:国税庁『民間給与実態統計調査』
(かっこ)内は前年比
会社員の所得がまったく増えていないという事実。確かに低所得者の割合は減りましたが、日本全体の貧困化が進んでいる、といえる状況なのです。
1990年当時、主要国で最も会社員の年収が高かったのが「スイス」で7万3226米ドルでした。2019年、スイスの平均年収は9万2555米ドルと、30年ほどで26%ほど増えています。
ほかの国も見ていくと、米国は47%増、英国は44%増、フランス31%増と、大きく年収が増えている国が目立ちます。またこの30年で大きく経済成長を遂げた韓国は92%の大幅増を記録。それに対して日本は2%増。ピークの1997年との比較では7%減という惨状です。
この先、日本に再浮上のきっかけはあるのでしょうか。先進国のなかでもコロナ不況から回復が遅いと指摘を受けるなど、明るい材料は見当たりません。私たちにできることといえば、将来のためにコツコツと資産形成を進めることくらいかもしれません。