日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は「2000年大卒の人の給与事情」について見ていきます。
良い時代なんてなかったよ…ロスジェネ世代最悪の44歳「手取り20万円以下が4割」の衝撃 ※画像はイメージです/PIXTA

社会人になった2000年…ITバブルが崩壊

2000年問題で緊張のなか幕を開けた2000年。3月には「PlayStation 2」が発売され、大ヒット。7月には九州・沖縄サミットが開催され、イメージソング『NEVER END』を安室奈美恵が歌いました。9月にはシドニーオリンピックが開催され、高橋尚子が女子マラソンで金メダル。柔道女子48kg級では田村亮子が三度目の正直で金メダルに輝くなど、日本は金5つ、銀8つ、銅5つの活躍。

 

映画では『ミッション:インポッシブル2』が興行収入100億円に迫る大ヒット。音楽ではサザンオールスターズの『TSUNAMI』が300万枚に迫る大ヒットを記録したほか、宇多田ヒカルや浜崎あゆみ、モーニング娘などがヒットを連発し、多くの人がカラオケで熱唱をしたのも記憶に新しいところ。

 

株価は2000年3月に2万円を超え、ITバブルに沸いていましたが、その後、ITバブル崩壊。2000年4月12日2万0833円を記録したバブル崩壊後最高値は、その後15年以上更新することはありませんでした。

下がり続けた会社員の平均給与…2000年大卒、希望が持てなかった

厚生労働省『賃金構造基本統計調査』によると、2000年大学卒、今年44歳を迎えた人たちの平均初任給は男性で19万6900円、女性で18万7400円。この年、大企業に就職ができた勝ち組会社員(従業員1000人以上企業)の初任給は男性で19万9000円、女性で18万7100円。一方、中小企業(従業員10~99人規模)は男性で19万3700円、女性で17万8700円。今では至る所で意識せずにはいられない格差が、それほどでもなかった時代。大企業だろうが、中小企業だろうが、就職できればそれで御の字、といったところだったでしょうか。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、2000年、会社員の平均給与は461万円。その後、2013年までの間、前年を上回ったのは、2007年(前年比100.5%)、2010年(前年比101.5%)の2度のみ。そのほかは、毎年前年の平均給与を下回るという、なんとも希望も夢もない時代を、今年44歳の人たちは過ごしていったのです。ちなみに最新の2019年の平均年収は436万4000円。2000年当時と比べて、94.7%という水準です(関連記事:『戦後70年…会社員の平均年収の推移』)。

 

厳しい就職活動を勝ち抜いたと思ったら、ITバブルの崩壊、そしてリーマンショック。震災後、アベノミクスで格差が助長されたと言われていますが、多少上向きになったかと思えば、このコロナ禍……「良い時代なんてなかったよ」という嘆きもうなづけます。

 

そんな今年44歳ですが、厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、手取り給料20万円以下(額面26万円以下)の割合は実に40.1%。5人に2人は手取り20万円以下というなか働いています。

 

【40代前半の月収(額面)分布】

20万円未満(14.30%)

20~22万円未満(7.40%)

22万~24万円未満(8.60%)

24万~26万円未満(9.80%)

26万~28万円未満(9.60%)

28万~30万円未満(9.50%)

30万~32万円未満(8.90%)

32万~34万円未満(8.30%)

34万~36万円未満(6.80%)

36万~38万円未満(6.00%)

38万~40万円未満(4.70%)

40万~50万円未満(14.30%)

50万~60万円未満(6.10%)

60万円以上(5.20%)

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より

 

この先、浮上が見込めるのか……このコロナ禍、先進国のなかでも経済回復が遅れに加え、人口減少による内需の落ち込み予想など、明るい未来を描くことは難しいでしょう。2000年大卒、今年44歳。できることといえば、地道に資産形成を勧めていき、自力で安心できる老後の生活を手に入れることくらいでしょうか。