日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、「1964年東京五輪と2021年東京五輪」、2つの時代を比較していきます。
会社員の給与は10倍に!「東京オリンピック」1964年と2021年を比較

57年前の1964年、会社員の平均給与は?

そんな1964年。労働力人口(15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたもの)は約4700万人(現在は約6800万人)。第1次産業(農林水産業)に従事する人は24.7%(現3.2%)、第2次産業(鉱工業)に従事する人は31.5%(現23.5%)、第三次産業(サービス業)に従事する人は43.8%(現73.3%)と、この57年間で産業構造は大きく変わりました。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、当時の会社員の平均給与は46万6600円。最新の調査(2019年)では平均436万4000円なので、単純計算ですが約10倍にも増えたことになります(関連記事:『戦後70年…会社員の平均年収の推移』)。1964年と比較すると物価は4.45倍*になっているので、現在の価値に換算すると年収207万円程度。これが当時の平均的な会社員でした。

 

*1964年の消費者物価指数を1として計算

 

1964年以降、会社員の平均給与は1971年に100万円を突破し、1975年に200万円、1981年に300万円、1989年に400万円を上回ります。上昇スピードは徐々に遅くはなっていきますが、順調に日本は豊かになっていったことが会社員の平均給与からも分かります。

 

しかし日本の勢いがここまでだったことは、誰もが知る事実。

 

1989年12月29日に3万8915円87銭を付けた日経平均は、1990年に暴落に転じ、同年10月1日には一時2万円割れ。ここから日本は長い低迷期を迎えます。上昇の一途を辿っていた会社員の平均給与は1993年に前年比99.4%と戦後初めてのマイナスを記録。その後1994年から1997年、2007年、2010年と前年比プラスに転じた年もありましたが、前年比割れを連発。バブル崩壊を機に、「給与は上がるのが当たり前」から「給与はすえおきが当たり前」と会社員の常識が大きく変わってしまったのです。

 

この30年、欧米では給与水準が2倍になりましたが、日本は変わらず。コロナ禍前、ビザの緩和や『ビジット・ジャパン・キャンペーン』など、国をあげての取り組みが実を結び、訪日外国人は急増していましたが、日本が「物価が安い国」になったことが大きいという側面もあったのです。

 

明るい未来を感じることのできない日本。2回目の東京オリンピックも、開催が決まった当時は思いもよらなかった、1年遅れの開催になりました。多くの調査で「オリンピックを中止すべき」という意見が過半数を超えていました。

 

1964年の東京オリンピックでも、巨額の開催費などを理由に、反対意見も目立っていたといいます。しかし開催後の調査では約9割が「オリンピックは日本にとってプラスになった」と回答。その背景にあるのが、選手の活躍でした。

 

2回目の東京オリンピックは、まだ前半戦に関わらずメダルラッシュの予感。57年前と同様に、選手の大活躍によって多くの人が「オリンピックが開催されて良かった」と実感できるものになれば、その先に日本の再浮上があるかもしれません。