集団行動がとれない、人見知りをする、ひとりでいたがるなど、親にとって心配な行動をとる子どもに対する接し方について、社会福祉法人彩大地の恵みのなーさりぃ理事長の大塚恵美子氏の著書『子どもたちの未来を切り拓く子育て』より、一部を抜粋・編集して、紹介します。
ドアを開けてくれる、気のきく子…親切心に秘められたメッセージ (写真はイメージです/PIXTA)

集団行動がとれない子の場合…「なぜこの行動をしているのか」を見極める

集団行動をとれないという子も、少なからずいるものです。この場合、「なぜこの行動をしているんだろう?」というところまで注目しないと、対処法が見つかりません。

 

たとえば、年中さんで、ランチの流れがわかっているのに、目を引きたくてランチ時に職員室の机の下に隠れてしまう子がいました。その子には、YES・NOをはっきりさせるため「いまはランチの時間だよ」と声をかけ、「かまってもらった」ということがわかるように、抱っこをして連れていくようにしました。

 

下の子が生まれてかまってほしい場合は、しっかり話を聴いてあげてから、みんなのところへ戻るということもあります。ひとりずつ、できない事情が違うため、背景をしっかり見極めます。そうすると、対処の仕方も変わってくるのです。

 

わたしたちが何かを運んでいるときにドアを開けてくれる子がいます。「なんて気がつく子なんだろう」と受けとることが多いかと思うのですが、子どもがこういった行動をとる背景には「自分を認めてほしい」というメッセージが隠れていることも…。ですから「〇子ちゃん、ありがとうね~」ときちんと伝えるようにします。

 

おかしいなと思われる行動を注意したり指摘したりするだけでなく、「なぜこんなことをしているのか」を見極めてから、対応する。そうすれば、こちら側の動きも、かなり変わってくるはずです。子どもの行動の「背景」に、目を向けるようにしたいですね。

人見知りの子の場合…いまの状況をそのまま受け入れる

人見知りの子の場合、いろいろな人と仲良くなることを急ぐ必要はありません。「早くたくさんの人に慣れてほしい」という方針の園もあるかと思いますが、まずはひとりの保育者と安心した関係性を築くことからはじめれば十分です。

 

ひとりの大好きな先生と「もう絶対大丈夫」という信頼関係を築けてから、ほかの人との距離を縮めていけばいいのです。人見知りの子には、大人からはあまりぐいぐいアプローチしすぎないようにしましょう。

 

これは、寡黙な子にも同じことが言えます。「こうかな?」「これでいい?」「こうしたらどう?」とこちらから声をかけすぎてしまうと、ことばを投げかけてもらうことに慣れすぎて、どんどん自分から発言をしなくなってしまうことがあります。ですから、いまの状況をそのまま受け入れて、こちらが対処することが必要なのです。

 

子どもの人見知りは、成長の過程として必要なものです。生後数ヵ月くらいから「この人は知らない」「抱っこの仕方が違う」とわかるようになり、顔見知りでない相手は、泣かれてしまいます。でもそれは成長の証。

 

親が「人見知りしたっていい」「泣いても大丈夫」とゆったりかまえていると、子どもにも安心感が伝わり、その子のペースで慣れていくようになります。ですから、あまり心配せず、「そのとき」を待ってあげてくださいね。