日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「会社員の転職」。ひと昔に比べて転職のハードルは下がったように思えますが、実際はどうなのでしょうか。
平均月給20万円の格差…「転職」で年収アップ狙うも3割は叶わず

会社員の転職事情…男性会社員「25人に1人」が転職組

会社員の給与格差を目の当たりにして、「現状を打破したい!」というならば、ひとつの選択肢が転職です。ただ転職に高いハードルを感じている人もいるでしょう。そこで、独立立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2020』で、いまどきの転職事情を見ていきます。

 

労働者に占める転職者の割合である「転職率」は、2019年、男性は4.4%、女性は6.2%。非正規雇用の割合が多い女性のほうが、転職率は高めです。

 

年齢的には、男性「24歳以下」が11.1%と、10人に1人が転職者と高いですが、「25~34歳」は6.8%、「35~44歳」で3.7%、「45~54歳」で2.4%。年齢が高くなるほど、転職社は稀な存在となります。これは女性も同じ傾向です。

 

そんな転職率は、いまから30年ほど前の1991年、男性で3.0%、女性で4.1%。当時と比べると、転職は一般的になった感があります。しかし2001年と比較すると、男性4.3%、女性6.4%。いまとほとんど変わっていません。また転職率のこの20年の推移を見ると、リーマンショック後の2010年には男性は3.7%まで低下。女性は2013年に5.3%まで低下しています。近年、人材の流動化が進んでいるといわれていますが、割合としてはそれほど進んでいないようです。

 

産業別に転職率を見ていくと、「宿泊業、飲食サービス業」が最も転職率が高く、10.7%。最も人材の流動化が進んでいる業界といえます。一方で、最も転職率が低いのが「農業、林業」で1.8%。以下「建設業」3.6%、「不動産業、物品賃貸業」4.1%と続きます。これらの業界は、転職は珍しい業界といえそうです。

 

次に「転職希望率」を見ていくと、男性10.8%、女性14.7%。転職への意気込みも、女性のほうが高い傾向にあります。年齢別に見ていくと、男性の場合は「25~35歳」が最も高く17.6%。女性の場合も同様で、20.6%。5~6人に1人は、転職を希望しています。

 

「転職希望率」の推移を見ていくと、2001年、男性は12.8%、女性は9.6%。同様、女性の転職希望率の上昇が顕著です。しかし転職率は大きく変わっていないことから、実際に行動に移す人は多くないといえそうです。

 

このように、「いまや転職は当たり前」といわれていますが、実際はイメージほど多くはなく、2000年以降は、女性で転職希望率の上昇が見られますが、転職率はほとんど変わらず。一方で人材ビジネス業界は近年、拡大しています。これは雇用体系の多様化が大きな理由で、転職そのものとはイコールではないのかもしれません。

 

ただ「今よりいいところ」、「現状打破」という意味では、職を変えるという選択肢は有力候補のひとつ。しかし厚生労働省『令和元年雇用動向調査』によると、前職の賃金に比べ「増加」は34.2%、「減少」は35.9%と、必ずしも「転職=給料アップ」とはいかず、転職の難しさが浮き彫りになっています。

 

将来を見据えて、所得をあげていくためにも、よりよい転職を実現したいものです。