日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「会社員の生涯賃金」。新卒から定年までに手にする給料、総額はいくらくらいになるのでしょうか。
会社員の「生涯賃金」…業種格差「2億8000万円」という哀しい現実

会社員が人生で手にする賃金の総額=生涯賃金

会社員の給料事情を見てきましたが、いったい学校を卒業してから社会人となり、定年を迎えたとして、どれくらいの収入を得ることができるのでしょうか。独立立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2020』によると、生涯賃金(退職金は含まず)は、男性の場合、高卒で2億1000万円、大学・大学院卒で2億7000万円、女性の場合、高卒で1億5000万円、大卒・大学院卒で2億2000万円としています。

 

会社員人生、大卒男性であれば額面で毎年550万円程度をもらっている計算になります。

 

さらに60歳に定年で退職金を受け取り、61歳以降、非正社員として一般的な定年の年齢まで働き続けたとしたら、男性の場合の生涯賃金は、高卒で2億5740万円、大卒・大学院卒で3億3220万円としています。

 

また企業規模別に見ていくと、男性大卒の場合、「従業員1,000人以上の企業」で3億2000万円、「従業員10~99人企業」で2億2000万円となっています。

 

男女差や学歴、企業規模などで、生涯賃金は大きく差がついてしまっています。

 

さらに前出の厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』で業種別の生涯賃金を算出してみると、大卒で最も生涯賃金が高いのは「鉱業、採石業、砂利採取業」で3億8412万円。一方、生涯賃金が最も低いのが「宿泊業、飲食サービス業」で2億18754円です。

 

【業種別生涯賃金】

「鉱業、採石業、砂利採取業」3億5426万円

「不動産業、物品賃貸業」2億9386万円

「金融業、保険業」2億8945万円

「建設業」2億8592万円

「学術研究、専門・技術サービス業」2億8481万円

「電気・ガス・熱供給・水道業」2億8185万円

「情報通信」2億7289万円

「製造業」2億5743万円

「運輸業、郵便業」2億5694万円

「卸売業、小売業」2億5340万円

「教育、学習支援業」2億5144万円

「生活関連サービス業、娯楽業」2億3183万円

「複合サービス事業」2億1887万円

「医療、福祉」2億1842万円

「宿泊業、飲食サービス業」1億9624万円

 

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』

 

ここ20年ほど、日本の賃金は変わっておらず、このまま状況が好転しない限り、推定値に近い生涯賃金になると考えられます。もちろん状況が悪化し、推定値を大きく下回ることも考えられるでしょう(関連記事:『企業規模別「大卒会社員の生涯賃金」の推移』)。

 

スタートラインではほぼ同程度の収入も、40年近い会社員人生では大きな格差となります。もちろんお金があれば幸せ、というわけではありませんが、定年後を見据えた資産形成には大きく影響することは確かです。