日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回、焦点をあてるのは「市区町村別の平均年収」。総務省の最新調査による市区町村別の平均年収ランキングから、自治体、それぞれの事情が見えてきました。
市区町村「平均年収」最新ランキング…全国上位の村、高年収の理由

北海道、山梨県…上位にランクインする村、それぞれの事情

さらに上位を細かく見ていきましょう。1位「東京都港区」1163万1584円のほか、ベスト10のうち8は東京都。そのなかで5位にランクインしたのは「兵庫県芦屋市」で平均年収652万0842円。神戸市の東隣に位置し、人口はおよそ9万3,000人ほどで、いわずと知れた関西のお金持ちの住む街として有名です。特に昭和初期に開発された「六麓荘町」は別格で、お抱え運転手を有するような富裕層だけが住む街として知られています。

 

そして10位にランクインしたのは「福島県川内村」。東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を受けた、福島県の浜通りに位置する村。昨年は296.6万円で595位だったので、驚くほどジャンプアップしていることになります。

 

内訳をみていくと「所得割の納税義務者数」が990人から1016人に増加。また「一般株式等に係る譲渡所得金額」が大きく増加しています。一時的に大きく所得が増えた人がいましたが、住民が非常に少ないため、村全体の平均年収にまで影響を与えた、という事情が想像できます。来年以降の順位に注目です。

 

【市区町村別「平均年収ランキング」ベスト10】

1位「東京都港区」1163万1584円

2位「東京都千代田区」1005万6536円

3位「東京都渋谷区」885万5484円

4位「東京都中央区」684万3638円

5位「兵庫県芦屋市」652万0842円

6位「東京都目黒区」636万1652円

7位「東京都文京区」621万1042円

8位「東京都世田谷区」565万3167円

9位「東京都新宿区」555万5123円

10位「福島県川内村」553万3609円

 

出所:総務省「令和2年度課税標準額段階別所得割額等に関する調」より

 

さらにベスト20まで見ていくと、11位「北海道猿払村」531万1491円、14位「山梨県忍野村」493万5692円の健闘が目立ちます。

 

「北海道猿払(さるふつ)村」は北海道北部、オホーツク海に面し、日本の最北にある「稚内」の南、人口は3,000人弱の小さな街です。

 

そんな街ですが「村中、高所得者ばかり」などと報道され有名になりました。高所得者が多い理由は、日本有数の水揚げ量を誇る「ホタテ」。以前の猿払村はまさに寒村という言葉がぴったりの街でしたが、「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換によって大変身。「ホタテ御殿」といわれるような邸宅が点在する、日本有数の高所得が集まる街に変貌を遂げました。

 

「山梨県忍野村」は山梨県南東部、富士山麓に広がる村。山中湖と河口湖の中間に位置する、のどかなロケーションが魅力です。高い平均年収を支えているのは、工作機械用NC装置や産業用ロボットの世界的なメーカーである「ファナック」。年収が高いことで知られ、1972年、この地に誘致されました。

 

地方の場合は、ある要因で平均年収が高くなったり、一時的に跳ね上がる傾向にあります。ただ年収が高いからといって、地域によって生活スタイルもさまざまですから、高収入=生活が豊かとは一概にいえないでしょう。