副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できている人は少ないのが現状です。今回は「事業的規模」と「業務的規模」について、サラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士が解説します。
「普通の大家」と「スーパー大家」…税法上有利なのは?税理士が解説 ※画像はイメージです/PIXTA

事業的規模…災害時にもメリットを発揮

災害等の被害に所有している賃貸物件があった場合なども、事業的規模と業務的規模では扱いが異なります。

 

災害等の理由により賃貸に出している不動産に損失が出たとき、「事業的規模」なら資産損失の必要経費は全額が対象となり他の所得と損益を通算できる「損益通算」の利用もできますが、「業務的規模」ではいくら資産損失が出てもその限度額は不動産所得の範囲内となります。

 

その損失の原因が災害による場合は、この不動産所得における規定とは別に雑損控除を適用することにより「業務的規模」の場合でも税制上の救済を受けられるのですが、たとえば立替をすることによって生じた資産損失の場合、「業務的規模」の場合は損益通算ができないという事態になります。

 

たとえば、木造アパートを取り壊して鉄筋コンクリート造のマンションの建て替え中で、下記のような状況の場合、

 

・賃貸料収入 120万円

・必要経費 200万円(取壊しによる除却損失の金額100万円及び取壊し費用50万円含む)

 

この木造アパートが10室を超えていた場合、120万円-200万円=▲80万円が他の所得と損益通算できることになります。一方、この木造アパートの部屋数が8部屋だった場合は必要経費に算入できる取壊しによる除却損失100万円のうち20万円しか必要経費とならないのでマイナスは生じず、他の所得と損益通算できる金額はゼロということになります。

 

大家として特別に不動産投資に力を入れていきたいとなった方、まずはこの「事業的規模」を満たすか満たさないかということを目標としても良いのではないかと思います。