「食べてすぐ寝る」のはよくないとわかっているが…
●ふだんの食事から睡眠を改善したい
食べてすぐ寝るのはよくないといわれます。食後2〜3時間はあけないと、就寝中、胃腸が活発に動き、眠りの質が下がってしまうからです。
ただし、胃が空のまま眠るのもすすめられません。夕食を抜くと、体は飢えた状態となります。
すると、飢餓ストレスを感じて、脳内でオレキシンという覚醒物質が分泌されます。オレキシンが増えると交感神経が活発になるうえ、オレキシン自体が覚醒作用や食欲増進作用を引き起こし、睡眠もさまたげられてしまうのです。
オレキシンの食欲増強効果については、昔、スタンフォード大学で学生を被験者として行なった断眠実験中、興味深い行動がみられました。実験の最中、学生たちは空腹を訴え、夜のスーパーへ食料を買いに出たのです。夜遅くまで起きていたことで、オレキシンの分泌が増え、食欲を増進させたからかもしれません。
寝る直前の食事も、夕食を抜くのも、睡眠にとってよくありません。どうしても早めに夕食をとれないときは、消化吸収に時間のかかるたんぱく質や脂質を避けて、軽めに済ませるといいでしょう。おすすめの食材は、深部体温を下げてくれる冷やしたトマトやキュウリなどの夏野菜です。
ただし、お腹が冷えすぎないように、夕食の時間帯によって量やメニューを調整しましょう。
西野 精治
スタンフォード大学 医学部精神科教授・医学博士・医師
スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長
日本睡眠学会専門医、米国睡眠学会誌、「SLEEP」編集委員
日本睡眠学会誌、「Biological Rhythm and Sleep」編集委員