すぐに眠りたい人は「少量のお酒」が助けになるかも?
●アルコールには脳の興奮をしずめる効果がある
体は疲れているのにすぐに眠れない、といった悩みをよく耳にします。
とあるオペラ歌手は、少しでも早く寝つけるように、寝る前にアルコール度数の高いウオッカをショットであおると聞きます。眠れない夜お酒を飲む、いわゆる寝酒の習慣のある人は多いのではないでしょうか。
少量のお酒が寝つきをよくするという多くの研究報告があります。アルコールには、脳を興奮させる神経物質の働きを抑え、脳を落ちつかせる神経物質の働きを促す作用があるのです。
ただし、大量のアルコールは睡眠の大敵です。入眠は早くなっても、自然で深いノンレム睡眠は現れず、レム睡眠も減少するためです。夜中に目を覚ましやすくなり、睡眠時間も短くなる傾向にあります。利尿作用から尿意で目が覚めたり、脱水が起こりやすくなったりします。
また、アルコールは舌やのどの筋肉を麻痺させるので、気道が狭くなり、いびきや無呼吸の原因にもなります。就寝中に呼吸障害があると十分な酸素をとりこめなくなり、睡眠の質が下がります。
夜中によく目を覚ましたり、朝早くに起きてしまったりするなら、明らかに飲みすぎです。眠るためにお酒を飲むときは少量にして、眠気を感じたらすぐに寝るのがよいでしょう。
西野 精治
スタンフォード大学 医学部精神科教授・医学博士・医師
スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)所長
日本睡眠学会専門医、米国睡眠学会誌、「SLEEP」編集委員
日本睡眠学会誌、「Biological Rhythm and Sleep」編集委員