コロナ禍により不動産価格は大きな影響を受けることが予想されるが、一方で住宅系の不動産価格への影響は限定的との見方もある。今回は、住宅系と店舗・オフィス系に分けて不動産価格への影響を考察する。

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オフィスや店舗は不動産価格が大きく値下がりせざるを得ない?

コロナ禍により大きな影響を受けると予想されるのが、オフィスや店舗です。


感染拡大を防ぐために政府が緊急事態宣言を出すなどして、飲食店では来客数が大きく落ち込んでおり、廃業せざるを得ない企業は増えることが予想されます。


こうして店舗の空きが増えれば賃料の下落要因となり、不動産価格も下がっていく可能性が高いでしょう。

 

 

また、コロナ禍により売上が落ちた企業は、スタッフを雇うための人件費の支払いに苦慮することになりますが、コロナ禍を要因として休業した企業等に支払われる雇用調整助成金の給付が12月末までとされており、この給付が終われば企業の倒産数が一気に増える可能性があります。

 

なお、帝国データバンクによると、新型コロナウイルス関連の倒産数は2020年9月16日時点で533社となっています。

 

その他、オフィスについては感染拡大を抑制するために推奨されるリモートワーク導入により、高いオフィス家賃を支払わなくてもよくなるといった可能性があります。

 

こちらも、将来的に空室が目立つようになれば不動産価格の下落要因となりえるでしょう。

 

なお、ビルディンググループの提供する市況データによると、2020年8月の東京都の空室率は2.99%と3カ月連続で空室率が上昇しています。

 

その他のエリアを見てみても、概ね空室率は下落傾向にある一方、成約賃料についてはまだ大きな下落には至っていません。

 

空室率については、今後も下がり続けることが予想され、この傾向が続けば成約賃料についても影響を受けることになるでしょう。

住宅系の不動産はコロナ禍による影響を受けにくい

店舗やオフィスは緊急事態宣言による来客低下や、リモートワーク導入等を理由に空室率が増加していくことが予想されますが、一方で住宅系の不動産については、コロナ禍による影響を受けにくいとされています。

 

これは、経済が悪くなっても住む場所は確保する必要があることが原因です。

 

実際に東京カンテイの市況データを見てみると、2020年8月の首都圏・分譲マンション賃料は前月比+0.5%とむしろ上昇しています。

 

その他のエリアを見てみても、大きく下落しているところは少なく、むしろ増えているエリアが多く見られます。

 

ただし、コロナ禍による減給等なされると、家賃の減額交渉があったり、より価格の低い賃貸に引っ越したりといった事も考えられるため、今後は下落する可能性もあります。

コロナ禍により家族と一緒に過ごす時間が増え新規住宅受注数が増加傾向

東京カンテイのデータを見ても分かる通り、現状では住宅系の不動産についてはコロナ禍の影響は限定的で、むしろ都市部においては上昇している地点も多く見られます。

 

これはデータ的な裏付けのあることではありませんが、コロナ禍により家族と一緒に過ごす時間が増えたことが一つの理由として考えられるでしょう。

 

例えば、住宅メーカーのヒノキヤグループでは、2020年7月の住宅の新規受注が対前年比で上回ったと発表されています。

 

また、東京都新宿区に本社を置く三栄建築設計では、2020年4月こそ前年同月比で80%弱まで落ち込んでいるが、その後の4カ月間は120%~150%程度対前年比で上回っており、2020年4月~8月の累計で126%程度の上昇となっています。

 

こうしたことからも、特に住宅系の不動産においては、現時点ではコロナ禍による影響は小さいと見ることができるでしょう。

まとめ

コロナ禍による不動産価格への影響について、店舗・オフィスと住宅に分けて考察してみました。

 

店舗・オフィスについては空室率の増加が数字として表れており、今後は不動産価格にも影響が及ぶことが考えられるでしょう。

 

一方、住宅系についてはむしろ上昇している地域も多い状態で、コロナ禍による影響は小さいと見ることができます。

 

とはいえ、これからさらに景気が悪化すると状況は変わる可能性があります。

 

12月末に打ち切られる予定の雇用調整助成金の動向など追っていくことが大切だといえるでしょう。

 

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