ここでは、数回に渡りコロナ禍が不動産価格に与える影響について考察していくが、その前に、コロナ禍以前の不動産価格はどうなっていたのかについて確認してみよう。

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都心を中心とした再開発による影響

2020年7月に国税庁により発表された1月1日の路線価によると、全国32万地点の標準宅地は19年比1.6%プラスで、5年連続で全国平均がプラスとなっています。

 

これはインバウンド需要増加による都市部のホテル建設需要や東京オリンピック開催に向けた都市部の再開発による影響が大きいとされています。

 

都道府県別で見ると、東京都が前年比5.0%、宮城県4.8%、福岡県4.8%、京都府3.1%、大阪府2.5%、愛知県1.9%のプラスといずれも都市部でのプラス幅が大きいことが分かります。

 

 

こうしたエリアにおいては、以下のようなプラス要因がありました。

 

・緩やかな景気上昇傾向や金融緩和政策による良好な資金調達環境によりオフィス需要が堅調だったこと(オフィス賃料の上昇)
・インバウンド需要増加によりホテルや店舗の出店が顕著だったこと(店舗賃料の上昇)
・都市部を中心に再開発が行われており利便性や繁華性の向上が見込まれること

 

これらの傾向はアベノミクスによる円安誘導や金融緩和政策、東京オリンピック開催を要因としていたこともあり、ここ数年間の継続した傾向でした。

円安などを原因としたインバウンド需要による影響

また、アベノミクスによる円安誘導や金融緩和政策、東京オリンピック開催はインバウンド需要増加により観光地の地価の大きなプラス要因ともなっています。

 

JNTOの統計によると、2012年に800万人程度だった訪日観光客は右肩上がりで増えていき、2015年には約1,900万人、2019年には約3,200万人と大幅な伸びを見せています。

 

これは、アベノミクスによる円安誘導等を要因としたものであり、2012年1月の対ドルの終値は約76円だったものが、その後2015年には117円になり、その後はほぼ横ばい傾向が続いています。

 

2020年1月1日地点の路線価では、北海道が前年比3.7%のプラス、沖縄県が前年比10.5%のプラスと観光地として人気のエリアでの大幅な上昇が見られています。

 

また、東京都内においても浅草など観光地での地価上昇が全体の地価を下支えしています。

26年振りに地方地価が上昇した

一方で、この数年の地価上昇は主に都市部が全体をけん引している形で、地方はその恩恵を受けていないとされることも少なくありませんでした。

 

こうした中、2019年に発表された地価公示では全国的に広くゆるやかな地価の回復傾向が見られ、地方圏では1993年以来26年振りに商業地の平均が上昇に転じ、住宅地を含めた全用途の平均でも下落から横ばいに転じています。

都心で中古マンションの成約戸数が新築マンションの供給戸数を上回る

日本においては新築物件の人気が高く、中古物件の流通量と比べて新築物件の供給量が多いのが一般的な傾向でした。

 

しかし、東京都の地価の上昇を背景に、新築マンションの価格が大幅に上昇していき、一般的な収入では新築マンションを購入することが難しい状況にまでなっています。

 

こうした状況から、東京都においては2016年から3年間、新築マンションの供給戸数を中古マンションの成約戸数が上回る逆転現象が起こっています。

 

 

 

これは中古不動産の流通環境の整備が進んだという側面もありますが、要因の多くは都心を中心にバブルと噂されるほどの地価の上昇だといってよいでしょう。

 

特に地価という側面においては、アベノミクスがもたらした影響は非常に大きかったということが分かります。

まとめ

コロナ禍以前の地価の動きについてお伝えしました。

 

ここ数年はアベノミクスや東京オリンピックを要因とした都心の再開発やインバウンド需要増加により都心を中心に地価が大きく上昇していました。

 

その要因の多くをインバウンド需要が下支えしていたこともあり、コロナ禍によりこの需要が全くなくなると地価にはどのような影響が及ぶのでしょうか。

 

次回以降、コロナ禍が不動産価格にもたらす影響についてより具体的に見ていきたいと思います。

 

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公開日時点の法令に基づき、不動産にかかわる資産形成について説明しています。個別の事例については、所定の要件を欠く場合があります。