2018年後半~2019年は良くないニュースが相次いだ不動産業界。サブリースに関わる問題や銀行の不正融資、アパートの違法建築など、様々な不祥事で世間を賑わせてきた。そのようななか、不動産コンサルティング会社である株式会社TWS Advisorsは「三方よし」を理念に掲げ、すべての関係者が利益を享受できる経営を目指している。本連載では、株式会社TWS Advisorsの小野耕司社長に、同社の理念や方向性などを伺い、「三方よしの経営」について紐解いていく。

不動産業界を揺るがした不祥事とは何だったのか?

2018年に発生した「かぼちゃの馬車事件」では、シェアハウスの建設と管理を行なっていた不動産会社が破綻。物件オーナーへのサブリース賃料が未払いとなった。

 

この「かぼちゃの馬車」のサブリース契約では、「頭金なしで投資でき、30年間の家賃収入を保証」を謳い文句に、投資資金を提携銀行とのローンで用意。誰でも気軽に不動産投資ができるようにしていた。しかし不動産会社は資金難に陥り、サブリースによる賃料の支払いが滞るようになる。結果、高金利のローンを組んでいたオーナーは融資した銀行へローン返済ができなくなり、多くが自己破産を強いられたか、自己破産目前の状況に置かれた。

 

さらに同事件では、提携銀行が資金を必要とするオーナーに対して、不適切な融資を行っていた事実も発覚。本来なら自行の融資基準を満たさないケースでも、審査部門に提出する書類を基準に見合うように改ざん、偽装して融資を承認させるなどの不正が行われていた。

 

不動産投資に関わる不祥事は、まだ続く。

 

多額の資産を持たない個人を対象に賃貸アパート経営を斡旋し、土地の仲介から建設、入居者管理、家賃集金まで一貫して手掛けることで急成長を遂げた不動産開発会社があった。しかし顧客の預金残高を改ざんし、融資審査を通りやすくしていたことが発覚した。

 

また、ある大手不動産会社では、建設した全国のアパートで部屋を区切る壁や外壁に設計図と異なる材料を使い、耐火構造が法律の基準を満たさないなどの不備が発覚した。これは、アパートの基本的な住み心地や安全性といったオーナーや居住者の利益よりも、自社の利益確保を優先したということだ。

 

これらの事件は、厳しい社会環境のなかで会社の成長を目指すあまり、企業が不正に手を染めた結果である。不動産投資において、投資家としては難しいと考えられる個人にまで対象を広げるようなビジネスモデルは、無理に無理を重ね、終焉を迎えた。

 

一方で、これらの不祥事が表面化したことにより、悪徳業者は淘汰され、不動産マーケットは健全化に向かっているはずだが、一連の醜聞はまだまだ「氷山の一角」という声もある。

 

そのような社会的背景のなか、株式会社TWS Advisorsは、2015年に設立して以降、収益不動産の企画・開発・コンサルティングをはじめ幅広い事業を手掛けている。上記のような不祥事を起こす企業とは根本的に異なる思想を持つ同社。代表取締役社長の小野耕司氏にお話を伺った。

 

シェアハウス問題に端を発した不動産投資業の不祥事は、世間をにぎわせた
シェアハウス問題に端を発した不動産投資業の不祥事は、世間をにぎわせた

 

[トップインタビュー]

不動産業で「三方よし」を実現させるためには?

――最初に、貴社の事業内容を教えていただけますか?

 

株式会社TWS Advisors代表取締役社長 小野耕司氏
株式会社TWS Advisors代表取締役社長 小野耕司氏

当社は、首都圏を中心に不動産の建築と売買、仲介、保有など、物件の管理業務を除いた不動産建築業のほぼすべてを網羅している会社です。

 

5年ほど前にリフォーム事業から始め、続いてシェアハウスやアパート、小型マンションの建築、最近では住宅販売事業にも取り組んでいます。

 

年商は、過去3年間の平均で10億円前後です。今年の10月に、経営体制が変更になったことで、これまでの「株式会社プレステート」から「株式会社TWS Advisors」に社名を変更して、気分一心、再スタートを切りました。

 

――新しい社名に込められた想いがあるそうですね?

 

日本には昔から、松下幸之助さんも言われていますが、もともとは近江商人の言葉で「三方よし」という概念があります。売り手が満足して、買い手も満足して、それを取り巻く社会が、その行為に満足をするという意味です。

 

私は以前から、この言葉が好きでした。関係する人、誰一人と損をすることなく、幸せになれる、という意味だからです。

 

今回、経営体制の若干の変更に伴い、社名を改めようとなった際に「三方よし」を英語で何と言うのか調べてみました。どこまで正しいのかはわかりませんが「three-way-satisfaction」という言葉を見つけ、その頭文字を取り「株式会社TWS Advisors」としました。

 

不動産業界は、ちょっと高く売りつけようとか、安く買い取ってやろうというような、言い方は悪いですが、利益を過度に追求する会社が出てきやすい業界だと、これまでの経験から感じています。

 

もちろん、当社も企業である以上、利益は追求していかなくてはなりません。しかし利益追求型のビジネスは、どこかで破綻してしまう。当社は5期目を迎えました。創業当初の荒波を乗り越えることができたのは、暴利を貪ってこなかったからだと考えています。

 

昨今の不動産業界では、数えきれないほどの不祥事が世間を賑わせて、個人を含む投資家たちに大きな損失を与えています。しかし当社はこの5年間で、誰も不幸にしてこなかったと自負しています。

 

これからも、私たちは暴利を貪るようなことはしない。誰かが不幸になるようなビジネスはしない。「三方よし」のビジネスを展開していくのだという想いを、新しい社名に込めたのです。

 

取材・文/関根昭彦 撮影(人物)/関根明生
※本インタビューは、2019年10月23日に収録したものです。