時流が変わり倒産に追い込まれた、幾多の企業
慢性的な人口減少や少子高齢化、20年以上続くデフレ経済など、様々な問題を抱える現在の日本。不動産業に関わらず、経営破綻する企業は少なくない。
経営破綻の理由は様々だが、時流に乗ることができなかった、社会の変化に対応できなかった、という企業は多い。たとえば近年、投資用不動産に関わる様々な問題が表面化したこともあり、会社員向けの投資用マンション販売だけに力を入れてきた企業は今、激しい逆風に晒されている。
不動産業界全般で見ても、空き家や空き地などの増加やIoTをはじめとする新技術の登場、働き方改革、グローバル化の推進、自然災害の脅威など、取り巻く環境は激変している。さらに変化のスピードは、加速度を増している。
そのような環境下で企業を発展させていくには、「強み」を持つことが必要だと一般的には考えられている。しかし株式会社TWS Advisors代表取締役社長の小野耕司氏は、「うちには特定の強みはない」と話す。その真意は、どこにあるのだろうか。
[トップインタビュー]
あえて特定の強みを持たない…その理由とは?
――貴社はこれまで、どの分野でビジネスを展開してきたのですか?
最近の4年間の主力は建築で、アパートなど投資用の物件を建ててきました。しかし、銀行の不正融資問題などから、現在は会社員が投資用不動産を所有することに逆風が吹いています。一方で実需用不動産に興味・関心が集まっているという流れもあることから、私たちは住宅販売事業に取り組みはじめたところです。
――貴社の強みとは、どんなところだとお考えですか?
誤解を恐れずにいうと、私たちには強みが特にありません。これは弱点ではありません。あえて、強みは作らないと言ったほうが良いかもしれませんね。
私たちは決して大きな会社ではなく、いろいろな職種や職歴を持つ人の集合体です。そのような体制下で、私たちが、これをやりたい、あれをしたいと言っても、それが必ずしも社会や業界のトレンドに乗っているとは限りません。これまでも私たちの意思で建築に軸足を置こうとか、土地の売買に軸足を置こうとしたことはなく、あくまでも社会のニーズに応え続けた、という側面が強いですね。
そのようなスタンスでいるために、常に全方向的にアンテナを張り続け、あらゆるニーズに応えるための体制は整えてきました。
もちろん、私たちだけで顧客ニーズのすべてに応えることができるとは限りません。協力会社との強固な関係を築き、「もしものとき」を想定しておくことは大切ですが、社会のニーズに応え続ける先に、会社の成長があるということが基本スタンスです。
――実際には、どのようにビジネスを展開しているのですか?
先ほど言ったように、私たちは様々なバックグランドを持つ人の集合体です。仕事においても様々なタイプのスタッフがいて、1,000万〜2,000万円程度の案件を数多くこなしていくスタッフもいれば、億単位の案件をこなしていくスタッフもいます。野球チームにたとえるとわかりやすいかと思います。ヒットを量産するタイプもいれば、一発ホームランを狙うタイプもいるのです。
私たちのような会社であれば、全員が4番である必要はありません。それよりも1番〜9番まで、すべてを揃えておくことが大切だと考えています。
一般的に会社という組織は、基本方針を決めて、みんなが同じ方向を向いて仕事をすることが多いでしょうが、私たちの規模の企業では、それはリスクになると考えています。1つの方向だけ向いていると、その方面の収益が悪くなったら、立ち行かなくなってしまう。方向転換もなかなかできません。
あえてバラバラの方向を向いていれば、1つの方向で収益が悪化しても、別のところで収益が上がっているので、会社が立ち行かなくなることはありません。あえて強みを持たない、ということはそういう意味です。
強みがないことが強みとなり、リスクヘッジにもなる。結果、会社を成長させること、継続させることに繋がるのです。
――そのなかで顧客のニーズに応える提案をする?
そうです。たとえば、相続した土地で収益を得たいというオーナーがいたら、アパートやマンションを建てるといいとか、インバウンド需要があるところならホテルや民泊用の施設を建てるといいですよとか、最適解を提案します。
最適解を提案するためにも、組織としては1〜9番まで揃え、外部に協力会社などのネットワークを構築していくことが重要です。
たとえば、今まで当社では主に木造建築に取り組んできました。しかし、お客様からコンクリートの物件を建てたいという要望があり、それがニーズに対する最適解であれば、「うちはできません」とお断りをすることはありません。最優先は顧客ニーズであり、どんな要望でも応えられる準備を常に行っています。