相続対策も含めた資産形成において有効といわれ、人気も高いのが「新築一棟マンション投資」である。しかし、さらなる少子高齢化が見込まれる国内市場で、「不動産投資」という手法自体が有効であり続けるのか、不安を感じるオーナーも多い。今後、不動産投資による資産形成を盤石に進めるためには何が必要になってくるのか? 本連載では、取り扱い件数4000件超の“相続専門”税理士でもある税理士法人チェスター代表・荒巻善宏氏と、200棟以上の新築一棟マンションを手掛けてきた株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長・蜂谷二郎氏に、「不動産投資による相続対策」を成功に導くためのプロセスについて伺う。

「相続税法改正」を機に不動産投資の裾野も拡大

――金融庁の「老後2000万円が必要」のレポートが話題になるなど、資産形成に関して自分ごとと捉える人が多くなっています。その選択肢のひとつとして、不動産投資に興味を持つ層が以前より増えているように感じます。実際のところはいかがでしょうか?

 

 

蜂谷 「不動産投資」を取り巻く情勢は、ここ4~5年程度で特に大きく変わってきています。地主の相続対策や法人による自社株の相続税評価額引き下げなど、10数年前まで不動産投資に取り組む人はごく限られていました。ところが、次第にその裾野が広がり、足元ではさらに拡大しています。

 

かつては「資産リッチ」の人たちに限られていたのに対し、サラリーマン大家さんという言葉を耳にするようになった頃から、「所得リッチ」や「マネーリッチ」の人たちも積極的に不動産投資に取り組み始めるようになりました。

 

また、そのような層に対し、木造アパートやシェアハウスへの投資を提案する事業者も急増しました。相続税法が改正されてその課税対象者が増えたことも、不動産投資への関心の高まりに結びついています。

 

[図表1]
[図表1]

 

税理士法人チェスター代表 税理士 荒巻善宏氏
税理士法人チェスター代表
税理士
荒巻善宏氏

荒巻 確かに、相続税の基礎控除が改正されたのを機に、不動産投資を取り巻く情勢は大きく変わりました。相続税は誰かが亡くなると必ずかかるものでなく、遺産総額が定められた基礎控除額を超えた場合にのみ発生するものです。

 

この基礎控除額が2015年1月1日から引き下げられ、改正前は亡くなった人の4%程度の間でしか相続税が発生していませんでしたが、一気に課税対象者が倍増したのです。ただ、こうして課税が強化されたこともさることながら、相続税への関心の高まりが不動産投資にも大きく影響していると思います。

 

私は「相続税の大衆化」と呼んでいますが、雑誌などのメディアでも改正のことが大々的に取り上げられ、「自分も何らかの対策を打っておかなければ……」と、より多くの人たちが相続税を意識し始めたわけです。

 

[図表2]
[図表2]

――そのように、税制改正を機に不動産投資への関心が急激に高まっているのは、やはり相続対策として本当に有効であるということなのでしょうか? 

 

蜂谷 本来の在り方について考えてみると、ポートフォリオの中に不動産を組み入れる意義として第一に挙げられるのは、やはり資産承継です。不動産を所有し、賃貸物件を建てておけば、オーナー様がご健在なうちは安定的な不労所得を得られ、やがてその資産をお子さんやお孫さんへと節税を図りながら継承できます。つまり、円滑な資産承継と相続税対策の手法として不動産投資は最も有効だということです。

 

荒巻 おっしゃる通り、相続税法上において不動産はその資産価値に対する評価が低くなることが重要なポイントです。たとえば、1億円の現金を相続したら、相続税評価額はその額面通りの1億円となります。しかし、不動産(建物)であったとしたら、「固定資産税評価額で計上する」というのが相続税法上の決まりとなっています。

 

そうすると、時価と比べて6割程度の評価になり、現金で所有しているケースよりも相続税の負担を抑えられるわけです。さらに、6割程度の評価となった建物を賃貸に回せば、「貸家の評価減」に該当して30%減額されます。

 

つまり、本当は1億円の価値がある資産を3000万〜4000万円といったレベルまで圧縮できるのです。また、土地についても路線価で評価されるので、時価の8割程度に抑えられます。こうして税金対策になるとともに、資産活用としても有効なのが不動産投資です。

 

[図表3]
[図表3]

 

 

「資産承継」が本来の目的で、節税は枝葉に過ぎない

株式会社フェイスネットワーク 代表取締役社長 蜂谷二郎氏
株式会社フェイスネットワーク
代表取締役社長
蜂谷二郎氏

蜂谷 目の前に差し迫ったわけではなくても、先々で相続が発生する可能性があるというご家庭にとって、不動産投資はメリットの多い手法だといえるでしょう。ただ、さらに、相続した何年か後に承継した物件をいったん整理(転売)し、相続人たちの間で資産を組み替えたり、二次相続(次の相続)対策を行ったりするケースも出てきます。

 

 

そういった場合に、1億円で購入した物件を6000万円や5000万円といった値段で手放すのでは、資産が目減りしてしまう結果となります。その点、着実に賃貸需要が見込まれるエリアの優良物件であれば、1億円で買ったものを1億円、あるいはそれ以上の価格で売却することも不可能ではありません。

 

こうして資産性が担保されていく物件で、なおかつ被相続人が健在なうちは着実にフロー(家賃収入)をもたらすのが不動産投資の理想形でしょう。

 

荒巻 節税のためだけに不動産投資を活用するのではなく、あくまで主眼は次の代に資産を継承していくことに置くべきだと思います。極端な例として挙げられるのが、タワーマンションを巡る動きでしょう。タワーマンションは一戸当たりの土地の持分割合が非常に低くなり、その分だけ相続税評価額を抑えられます。

 

そこで、節税対策としてタワーマンション購入が注目されたわけですが、たとえば余命宣告を受けた被相続人の名義で購入し、実勢よりも割安な評価額で相続を済ませ、その直後に購入価格に近い実勢価格で売り払う人まで出てきました。税務当局が目を光らせてこうした動きを取り締まるのは当然のことでしょう。

 

蜂谷 極力目減りさせないかたちで次の代へと資産を着実に承継していくのが本来の目的であり、節税はそれを果たすうえでの一つの手法にすぎないということですね。不動産投資は相続対策として最も有効ではあるものの、本来の目的を見失ってはいけません。

 

 

 

(続)

取材・文/大西 洋平
※本インタビューは、2019年10月7日に収録したものです。