相続対策も含めた資産形成において有効といわれ、人気も高いのが「新築一棟マンション投資」である。しかし、さらなる少子高齢化が見込まれる国内市場で、「不動産投資」という手法自体が有効であり続けるのか、不安を感じるオーナーも多い。今後、不動産投資による資産形成を盤石に進めるためには何が必要になってくるのか? 本連載では、取り扱い件数4000件超の“相続専門”税理士でもある税理士法人チェスター代表・荒巻善宏氏と、200棟以上の新築一棟マンションを手掛けてきた株式会社フェイスネットワーク代表取締役社長・蜂谷二郎氏に、「不動産投資による相続対策」を成功に導くためのプロセスについて伺う。第4回目のテーマは、「都心一等地における不動産投資」等についてである。

都内の一等地なら堅実な「賃貸需要」が見込めるが…

――前回までのお話で、地方都市や首都圏郊外など、コンスタントな賃貸需要を見込めないエリアで不動産投資を行うと、空室の発生で大きくアテが外れかねないことはよくわかりました。では、そう単純ではないとは思いますが、「東京都心の一等地」に的を絞れば、ほぼ期待通り、あるいはそれなりの成果を達成できるものなのでしょうか?

 

 

税理士法人チェスター代表 税理士 荒巻善宏氏
税理士法人チェスター代表
税理士
荒巻善宏氏

荒巻 私も地方在住のお客さまから、似たような質問を受けることがあります。「東京の不動産に投資してみようと考えているが、どのエリアが有望なのだろうか?」という趣旨のものです。やはり、地方に住んでいると東京に関してなかなか土地勘が働きませんからね。私は不動産の専門家ではなく、こうした質問には即答できません。ぜひともプロの見解をうかがいたいところです。

 

蜂谷 確かに、都内の一等地なら堅実な賃貸需要は見込めるでしょう。ただし、空室が出なかったとしても、そもそもの「収益性に難がある」ケースも少なくありません。どういうことかというと、現在、特に都心の「超一等地」は物件価格がかなり高くなっていて、利回りが非常に出にくくなっているということです。

 

タワーマンションもしかりで、入居者は絶えず見つかったとしても、収益性があまりにも低くて資産形成に結びつきづらいのが現状です。もちろん、一等地であれば引く手あまたで、つねに売りやすい物件でもあるでしょう。しかしながら、不動産投資は、「着実に資産を形成できる」という条件が不可欠です。

 

①賃貸需要が安定的②資産価値が下がりにくい(高い値段ですぐ転売できる)③資産形成を叶える(それなりの利回りを期待できる)、という条件をすべて満たす物件は、都内においても実は限られてくるのが現実です。

 

荒巻 先日、蜂谷社長のセミナーをお聞きしました。都内でも城南・城西は居住者が多くてコンスタントに賃貸ニーズを見込め、特に単身者世帯が多いので、ワンルームを中心としたマンションやアパートを所有していれば、安定的に資産を形成できるということでした。そして、そのエリアの中でも「城南三区」に的を絞ったほうがいいという話についても非常に腹落ちしました。自分も不動産投資を始めようかと思ったくらいです(笑)。

 

蜂谷 つねに我々は、『生涯家賃収入』という観点から物件開発に取り組んでいます。長期にわたって着実に家賃収入が入ってこなければ、真の資産形成とはならないからです。特に全国平均では空室率が高まってきている現状を踏まえれば、賃貸ニーズが高く、絶えず新たな入居者が現れるエリアに物件を所有するのがベストだといえるでしょう。

 

 

築古は経年劣化で、ある程度の「瑕疵」の覚悟が必要

――「城南三区」というエリアについてはまた後ほど詳しくお伺いします。不動産投資ではエリア選びの他、「入居者に人気の新築にするか? それとも割安な中古にするか?」との選択でも迷いがちです。また、「一棟所有」と「区分所有」のどちらにすべきかで悩んでいる人も多いようです。これらに関しては、どのようにアドバイスされますか?

 

 

株式会社フェイスネットワーク 代表取締役社長 蜂谷二郎氏
株式会社フェイスネットワーク
代表取締役社長
蜂谷二郎氏

蜂谷 確かに、中古物件は新築よりも費用を抑えられます。その中でも、誰もが欲しがるのは「築浅物件」に絞られてくるでしょう。ところが、築浅物件は意外と出回らないもので、中古の築古物件か、新築かの選択となるケースのほうが圧倒的に多いのが現実です。

 

そして、築古物件となると、不動産の専門家でも見逃しかねない瑕疵(何らかの欠陥や不具合)の問題が絡んできます。築浅なら瑕疵担保責任によって売主がその責任を負うのが原則ですが、築古の場合は事情が異なってきます。経年劣化である程度の瑕疵は避けがたいことから、売り主が故意に隠していた場合などを除き、契約によっては瑕疵担保責任が免除されることも少なくありません。

 

荒巻 深刻な瑕疵が発覚すると、当初の計画に狂いが生じる恐れも出てきますね。

 

蜂谷 一方、一棟所有と区分所有のどちらが好ましいのかについては、先ほどの空室リスクのことを踏まえれば結論は明白です。区分所有では、退去したその瞬間から家賃収入がゼロになってしまいます。そもそも、ワンルームの区分所有は家賃収入からローンの返済額や諸経費を差し引くと数千〜数万円しか手元に残らない収支になりますから、空室が出るといっそう苦しくなってしまいます。

 

荒巻 前回、空室だらけの地方都市の物件を失敗例として挙げたように、相続税の節税対策しか念頭にないと、期待通りの家賃が入ってこなくて借金だけが残ってしまうことにもなりかねません。『人生100年時代』ともいわれますが、その長い道のりの中で、自分の資産を守っていくためにも、投資物件を所有した後に継続的なフロー(家賃収入)を着実に得ることが重要になってきます。仮に60歳で始めたとしても、そこから先に40年もの時間があるわけですから。

 

蜂谷 そういった意味でも、ワンストップで企画・設計・施工から管理まで一貫して手掛けている当社としては、物件の引き渡しを終えた時点から長いお付き合いが始まると考えています。生涯の伴侶と同じく、お客さまとは一生のお付き合いになるのです。

 

 

(続)

取材・文/大西 洋平
※本インタビューは、2019年10月7日に収録したものです。