スリランカ・小売業の成長を支える著しい経済発展
スリランカの小売業は、インド、インドネシア、ベトナムなどの他アジア諸国と比較して内需が小規模にも関わらず、近年では目覚しい成長を遂げてきました。小売業の堅調な成長は、国内において中間所得層の拡大やそれに伴う支出上昇、インフラを含めた都市化、外国人観光客の増加に伴う観光業の成長が、大きな要因となっています。
2009年には30年間続いた内戦が終結したことで、スリランカ経済は安定的に発展し、2009年以降の平均経済成長率は5.8%を記録しています。この経済成長率を背景に、スリランカは低所得国から中所得国へと経済の移行が進んでいるのです。
スリランカの1人当たりGDP所得水準は、パキスタン(約1,547米ドル)、バングラデシュ(約1,516米ドル)、インド(約1,939米ドル)の周辺諸国と比較をしても高い水準であり、2017年は約4,073米ドルまで上昇。コロンボ都市圏に限っては、スリランカの1人当たりGDPの約2倍にまでなっています。
[図表]スリランカにおける1人当たりGDPの推移
[図表]1人当たりGDPスリランカと周辺諸国と比較
インバウンドに関しては、2009年以降、主にインドと中国からの観光客が増加しており、2016年は200万人だった外国人観光客は、2020年に400.5万人を超えると予想されています。カジノを目的で訪問する観光客も増加すると予測され、今後はさらに、外国人観光客によるブランド品や高級品の購買需要が強くなると予想されます。
[図表]スリランカにおける海外旅行者の推移
しかしスリランカの小売事業所の売場は、周辺のアジア諸国と比較してもかなり不足している状況です。大手不動産のコンサルティング会社である、ジョーンズラングラサール(JLL)の統計によると、主要都市であるコロンボの小売事業所の売場面積は2013年には66万ft2であり、テナントの空室率は平均5%と低い傾向にありました。2015年の需要は270万ft2 、2018年には330万ft2に達すると予測されていましたが、供給は2018年に220万ft2にしかなく、依然として供給が需要に追い付いていないのが現状です。
※参考単位:1ft2=0.09m2
[図表]小売事業所の売場面積スリランカと周辺諸国の比較
このような状況のなかで、スリランカの商業の中心地であるコロンボでは、昨今、小売業への投資が増加し、現在、10のモール(25,000ft2 から250,000ft2 規模)が展開されています。Softlogic 社(スリランカの大手コングロマリット企業のひとつ)の象徴である、高級百貨店「ODEL」 の旗艦店や、「Colombo City Centre」(2018年9月にオープン、12万ft2に及ぶ複合型施設)は、外国人観光客からも人気を集めている一方、既存の「Majestic City」、「Liberty Plaza」、「Crescat Boulevard」、「K Zone」といったモールは、地元の人たちに親しまれています。
[図表]スリランカにおける小売事業所の売場面積の推移
積極的な成長戦略を描く、高級百貨店「ODEL」
Alexandra Placeにある「ODEL」の旗艦店は、総売上高の約50%がインバウンドによるもので、国内はもとより海外からの消費に牽引されています。この店舗は、国内外のブランドを扱い、1日あたりの来店は4,000人以上、取引数は2,000件を超えています。
現在、60以上の海外ブランドと契約している「ODEL」は、国内で生活水準が向上し、消費者がより高品質のものを求めるようになったことや、インバウンド需要の増加によって、驚異的な成長を遂げています(
また「ODEL」は、来店者に買い物体験を提供するだけでなく、
今後「ODEL」は、数年内にオープンするモールに大型店を出店し、海外ブランドを拡充させる戦略で、最近出店した「Colombo City Centre」では総売場面積の33%を占め、集客の核となるテナントになっています。また2019年に出店する「S
[図表]スリランカにおける主要ショッピングモールの概要
スリランカにおける小売業は、中間層の増加、外国人観光客の増加を背景に、消費が活発になっており、関税の免除でブランド品への購入意欲も高まっています。今後、売場不足を解消していくことが、業界として必要となるでしょう。そのような状況のなか、Softlogic社の「ODEL」は存在感を示しており、成長戦略をもって積極的な事業展開を進めていく予定です。