日本の富裕層による「フィリピン」での不動産投資が人気だが、変化のスピードは想像以上に速く、正確かつ最新の投資情報を得るのは難しい。そこで、フィリピンで多様な投資用不動産の開発や取得のために日々奔走している、株式会社ハロハロホーム・エグゼクティブディレクター家村均氏に、2019年初頭のフィリピン不動産投資の現状についてお話を伺った。

フィリピンの投資環境は格段に整備されている

株式会社ハロハロホーム エグゼクティブディレクター 家村均氏
株式会社ハロハロホーム
エグゼクティブディレクター 家村均氏

最初に、簡単に自己紹介をさせていただきます。

 

私は、1986年に東急電鉄に入社後、海外事業部で世界各地の不動産開発や事業再構築業務に従事しました。それから、経営企画部門で東急グループの流通・メデイア部門の子会社・関連会社の経営・財務管理業務を経て東急を退社。コンサルティングファーム(アクセンチュア・ユニシス)や投資ファンド(三菱UFJキャピタル)などで、企業や自治体の事業再構築、事業民営化等の支援や国内外のM&A案件のアドバイザリーを実施してきました。

 

そして、2018年10月から、ハロハロホームにジョインして、日本やその他の国の投資家などに対して、フィリピン不動産の販売や、フィリピンへの事業進出のアドバイスなどを行っています。

 

ハロハロホームに来たのは3ヵ月程前ですが、投資先としてのフィリピンには、かなり以前から注目をしており、個人的にも、7~8年くらい前からフィリピンにコンドミニアムを買っています。

 

フィリピンに限らず、新興国への投資に興味をお持ちの方は、国レベルでのマクロ的な成長が長期的に見込まれる点に魅力を感じることが多いでしょう。よくいわれることですが、かつての日本の高度成長期のような状況になっている、あるいはなるであろう国に投資をしておけば、短期的には上げ下げの波はあるにしても、長期的には大きく資産を増やせる可能性が高いことは明らかです。基本的には、現在の日本のような低成長かつレッドオーシャンの国で投資をするよりも、フィリピンは利益を得やすいブルーオーシャンであると考えています。

 

ただし、新興国であるがゆえのリスクはありますし、また(現地から見て)外国人であることから、さまざまな制度上の制限もあります。それらについては、やはり現地をよく知り、目利きの力があるアドバイザーや仲介業者から情報を得ることが重要です。

 

現在では、ハロハロホームをはじめ、現地に根付きながら日本人投資家向けの優良な情報を提供したり、サポートをしたりしてくれる業者も増えたため、格段に投資環境は整備されていると感じます。私自身の投資や海外での事業の体験も踏まえながら、投資家の皆さまに役立つ情報をご提供していきたいと考えています。今回は、5回にわたり、2019年初頭のフィリピン不動産投資の現状についてご説明していきます。

 

 

一人当たりGDP3,000ドル超え。新しい成長ステージへ

世界の国々のなかで、ASEAN諸国は日本から近いことからもあり、日本人になじみ深い新興諸国エリアです。そしてASEAN諸国のなかでも、フィリピンはとりわけ投資に有望な国だと考えられます。その理由のひとつに、人口が約1億600万人と、インドネシアに次ぐ多さであり、かつ若年になるほど人口が多くなる、きれいな「ピラミッド型」の人口構成であることがあります。国全体の平均年齢が24歳と若く、まさに若者の国です。そのため、将来にわたって労働力人口が増え続ける、いわゆる人口ボーナス期が続きます。これは投資対象としての大きな魅力です。

 

現在の経済(実質GDP)成長率は、6%~7%程度で推移しており、ベトナムと並んで1、2位を争います。また、GDPの規模感は3,000億ドル強で、ASEAN諸国のなかではインドネシア、タイに次いでいます。そして、2018年には国民1人当たりGDPが3,000ドルを超えました。

 

ご存知の方も多いかもしれませんが、国の経済発展の経験則として、国民1人当たりGDPが3,000ドルを超えると、自動車や耐久消費財の普及率が急速に伸びるといわれています。逆に、3,000ドルを超えるところが、ひとつの「壁」になるともいわれます。その意味では、フィリピンはいままさに、新しい成長ステージに入った段階、といえるかもしれません。

 

しかし一方で、フィリピンは貧富の格差が大きい国です。豊かな都市地域と、貧しい農村地域では、生活レベルに大きな差があります。そのため、国民全体の平均である「国民1人当たりGDP」の指標としての重要度は、多少下がるかもしれないと思います。

 

このように国の経済全体に規模感があり、また、成長率も高いことは、国際的に高く評価され、たとえば、米国の『USニューズ&ワールド・レポート』誌では、2018年に投資するのに適した国のランキング1位に、フィリピンを挙げています。

 

また、格付け機関によるフィリピン国債の格付けでは、S&Pとフィッチはともに「BBB」、ムーディーズは「Baa2」と、いずれも投資適格級として評価されています。

 

ところが、多くの日本人にとって、フィリピンは、「治安の悪い、遅れた国」あるいは「リゾート地で遊びに行くところ」というイメージが先行しており、経済的な実力が正しく評価されているとはいいがたいのではないでしょうか。つまり、大きく過小評価されているように感じます。欧米諸国の方が、フィリピンの現状や潜在的な実力を正しく評価しており、それが、フィリピン国内のIT-BPM(Business Process Management)産業の成長につながっている一面があります。

 

次回は、フィリピンの産業成長などについて説明します。

 

 

取材・文/椎原芳貴 撮影/有本真大(人物)
※本インタビューは、2019年1月17日に収録したものです。