サ高住特有の「参入障壁」とは?
国土交通省の調べによると、サービス付高齢者向け住宅(サ高住)の登録件数は、2011年の制度開始から1年半後の2013年6月末に約10万戸、2018年5月末には約23.1万戸と急速に増えている。棟数は2018年5月末時点で7,000棟を突破した。しかし、着実に増えてはいるものの、国が掲げる目標にはまだほど遠いのが現実だ。
「国は2025年までに146万戸(住生活基本計画)の高齢者向け住宅を供給することを目標としており、そのうちの約50万戸がサ高住です。現時点のサ高住の供給戸数は半分にも届いておらず、目標が達成できるかどうかは何とも言えません」(岩橋氏)
供給ペースが緩慢な理由のひとつは、サ高住特有の「参入障壁」だ。部屋だけでなく、安否確認や生活相談といった最低限のサービスの提供が義務付けられているサ高住では、介護のプロである事業者(介護事業者)と委託契約を交わし、サービスを提供してもらう必要がある。だが、サービスの質が高い介護事業者を確保するのは難しく、これが参入の大きなネックとなっているのだ。
その点、太陽ハウスは、土地の仕入れや建物の建設だけでなく、優秀な介護事業者のセッティングも行っている。医療・介護のプロではなく、業界へのツテもない投資家に代わって、サービスが問題なく提供できるようにお膳立てを整えてくれるのである。
何より同社が頼もしいのは、運営開始後に介護事業者が契約を解消しても、ほかの事業者をセッティングしてくれる点である。しかも、事業者が変わるまでに“つなぎ”の期間が生じる場合は、太陽ハウス自身が介護事業者となってサービスを提供する。
「介護業界は慢性的な人手不足に悩まされています。働き手がいなくなってサービスが継続できなくなり、契約解消を求められることもあります。これは、最低限のサービス提供が義務付けられているサ高住経営にとって非常に大きなリスクです」
そう語るのは、同社で高齢者住宅事業を担当する住宅開発部の福永俊介課長である。太陽ハウス以外の不動産会社でサ高住を建てた場合、介護事業者が委託契約を解消すると、代わりの事業者は投資家の責任で探すことになるケースが多いという。
「しかし、それでは投資をするオーナー様だけでなく、サービスを受ける入居者様にも大変なご迷惑をかけることになります。当社は地域社会の発展に貢献し、地域社会に必要とされる会社となることを経営理念に掲げています。ですから、投資家や入居者に迷惑を掛けるようなことがあっては絶対にならない。その思いから、責任を持ってサービスが提供し続けられる環境づくりをお約束しているのです」(福永氏)
高い需要を「入居者の確保」に結び付けるには?
別の介護事業者が見つかるまでの“つなぎ”として太陽ハウスがサービスを提供できるのは、同社自身がオーナー兼事業者としてサ高住を運営した経験を持っているからである。太陽ハウスは2009年に高齢者住宅事業をスタートし、2012年秋に最初のサ高住を流山市にオープンさせているが、これは自社運営のための物件であった。
「お客さまにサ高住を提案するためには、まず自分たちが運営を経験し、どうすればお客様が収益が上げられるのか、また、どのような問題が起こりうるのかということをしっかり学ぶべきです。自治体への登録申請に始まり、入居者募集、サービスの提供と、あらゆることを経験し、失敗を重ねながらノウハウを積み上げていきました」(岩橋氏)
自らが介護事業者を務めることで、事業が抱える課題を知り、他の事業者とのネットワークも広がった。これが、新しいサ高住を供給するたびに適切な事業者をセッティングできる強みに結び付いている。また、自らがサ高住を運営することで、「入居者を確保するのが意外に難しいことも痛感しました」と岩橋氏は振り返る。
「高齢者が増えている時代背景を考えれば、黙っていても入居者は殺到するだろうと思っていたのですが、そう甘くはありませんでした。高齢者の場合、一般の賃貸住宅の入居希望者と違って、住宅情報サイトに情報を掲載してもほとんど目に留めてもらえないのです。そこで、当社のケアマネージャーを中心とした高齢者の入居促進専門の部門を創設し、病院やケアマネージャー、介護福祉士などを訪問し、高齢の方々を紹介してもらうという営業方法に切り替えました」(岩橋氏)
紹介してもらう医療・介護関係者との関係を緊密にするため、介護資格を持つ人材を採用し、サ高住専門の「入居促進チーム」を設けた。福永氏は「一般の賃貸住宅に比べて入居希望者へのアプローチが難しいことも、サ高住経営の大きな課題のひとつです。それを克服して早期に満室を実現できるのは、当社ならではの強みのひとつだと思います」と語る。