都心部を中心に土地価格が高騰し、やや過熱気味ともいえる不動産投資市場。新たな物件選びにあたっては「価格が高すぎる」「利回りが確保できない」と悩んでいる方も多いだろう。本連載では、株式会社Coeur代表取締役の大坂真氏が、年9%以上の高利回りが見込める東京郊外などの新築一棟物件を取得し、適切な家賃設定で満室を維持しながら、最終的にキャッシュを大きく膨らませる最新の不動産投資術を紹介する。第3回目は、満室経営で「高利回り」を実現する秘訣を伺った。

最小の投資で入居者候補に喜んでもらえる設備とは?

空室リスクを抑え、“満室経営”を実現するためには、入居者に好まれやすいデザインや設備を採り入れる必要があります。しかし、これらにあまりお金を掛け過ぎると、建築コストが大きくなって利回りが下がってしまいます。そこで当社は、知恵と工夫によって設備の費用を極限まで抑えています。

 

たとえば、マンションに備え付ける調理台の熱源には、都市ガス、IHヒーター、プロパンガスなどの種類がありますが、当社の物件はすべてプロパンガスを使用しています。なぜなら、プロパンガス会社と供給契約を結ぶと、給湯器のほか、エアコンや温水洗浄便座、モニター付きドアホンといったさまざまな設備を無償で提供してくれるからです。

 

これらの設備を一棟すべてのワンルームに付けると数百万円もの費用が掛かりますが、それがゼロになるのですから非常にありがたい話です。借入金が大幅に減って、キャッシュが回りやすくなるのは言うまでもありません。

 

一方、あまりお金がかからず、ほかの物件と大きく差別化できる設備は積極的に導入しています。浴室テレビやウォークインクローゼットなどがそうです。

 

当社の物件の浴室には、地上波だけでなく、BS、CSも視聴できるテレビを必ず設置しています。導入費用はそれほど高くありませんし、ほかの物件で取り付けているところは滅多にないので、入居者への強烈なアピールポイントになります。

 

ウォークインクローゼットを設けているワンルームマンションもあまり多くはありません。入居者にとって、ワンルームマンションは収納スペースが狭いことが大きな不満のひとつですが、それを解消することによって空室リスクを抑えやすくなります。とくに女性の入居者には喜ばれます。

 

このほかにも間接照明やレール式の照明など、数千円から数万円で取り付けられて、部屋の魅力を高めることができる設備は積極的に採り入れています。

 

不要なところにはお金を掛けず、最小投資で最大効果が得られるところにはお金を掛ける。これが利回りを高めつつ、空室リスクを抑えるための秘訣です。

あえて「やや低めの家賃設定」で勝負する理由

空室リスクを抑えるためには、家賃をいくらに設定するかということも非常に大切です。

 

当社では、土地を仕入れる段階から表面利回りを年9%以上にするための綿密な収支シミュレーションを行い、それに基づく想定家賃をお客さま(投資家)に提案しています。

 

高い利回りを得るためには、家賃を高めに設定するのが望ましいことは言うまでもありませんが、周辺相場に比べて割高に感じられる家賃設定だと、入居付けがうまくいかなくなる恐れがあります。

 

そこで当社は、周辺相場を徹底的に調査したうえで、それよりもやや低めの想定家賃を提案しています。エリアによっても異なりますが、共益費込みで月5万円前後といったところです。もちろん、安いとは言っても、年9%以上の表面利回りが得られることを大前提としています。

 

あらかじめ想定家賃を低めに設定しておけば、経年による家賃下落リスクや下落幅を抑えることができます。しかもベースが安いのですから、需要が高まれば家賃を引き上げることも可能です。年9%以上の利回りを年10%以上に高めることもできます。

 

一般に賃貸の需要は、入学・入社や異動のピークである新年度(4月)に向けて、年明けごろから高まっていきます。そのため当社は、前の年の11~12月ごろまでに建物を完成させ、入居募集を開始することをお客さまにお勧めしています。この時期なら、想定より高めの家賃でも入居者が確保しやすいからです。

 

逆に新年度が目前に迫った3月中旬以降は、想定家賃よりもさらに低めに設定しないと空室が埋まらなくなる恐れがあります。家賃をできるかぎり高く設定して利回りを上げるためには、タイミングが非常に肝心なのです。

 

ちなみに、入居者が確保できず、家賃収入が減ることを恐れてサブリースを希望する投資家もいらっしゃいますが、当社はサブリースを行っていません。エリアの選定や設備の工夫、低めの家賃設定などによって、物件そのものが入居者を引き付ける魅力を十分に備えていると確信しているからです。

 

サブリース契約を結ぶと、手数料と引き換えに家賃保証などの安心感が得られる半面、利回りはどうしても下がってしまいます。管理会社の力に頼らなくても十分な収益を確保できるのが、当社の物件の大きな強みであると自負しています。
 

 

 

取材・文/渡辺 賢一 撮影(人物)/佐山 順丸
※本インタビューは、2018年5月16日に収録したものです。

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