都心部を中心に土地価格が高騰し、やや過熱気味ともいえる不動産投資市場。新たな物件選びにあたっては「価格が高すぎる」「利回りが確保できない」と悩んでいる方も多いだろう。本連載では、株式会社Coeur代表取締役の大坂真氏が、年9%以上の高利回りが見込める東京郊外などの新築一棟物件を取得し、適切な家賃設定で満室を維持しながら、最終的にキャッシュを大きく膨らませる最新の不動産投資術を紹介する。第2回目は、具体的なエリア選びのポイントを伺った。

「高利回り」と「満室」に、とことんこだわる理由

「いかに利回りを上げられるか?」にこだわることは大切です。利回りが高くなれば、当然ながらキャッシュフローは増えますし、売却時にもより大きな利益を得ることもできます。インカムとキャピタルの両面で大きな収益が見込めるのです。

 

もうひとつ強くこだわるべきなのは、「いかに満室を維持するか?」ということです。満室が保てなければキャッシュフローが減るのは言うまでもありません。空室が増えると利回りが下がるので、売却時にも不利となります。

 

もちろん、利回りを上げるだけなら、とことん安い中古物件を取得する方法もありますが、出口戦略を考慮しますと、自分の首を絞めることに成り兼ねません。

 

第1回で紹介したように、当社は「郊外の木造一棟ワンルームマンション」のメリットに着目して、年9%以上、時に10%以上の表面利回りを実現する物件を提供しています。しかもすべて土地から仕入れて建物を建てる新築物件です。

 

首都圏や仙台にて駅徒歩10分以内で、表面利回りが年9%以上の新築物件を私自身ほとんど目にしたことがありません。

 

新築なら入居者は確保しやすく、家賃も数年は下がりません。また、RC造に比べて耐用年数が短い木造でも、早期なら有利な条件で売却することが可能です。賃貸によるキャッシュフローを十分に得たうえで、大きな売却益も得られるわけです。

乗降客数が少なくても「単身世帯」が多ければ・・・

「郊外」「木造」という2つのキーワードに着目すれば、物件を安く取得し、利回りを上げることが可能です。

 

たとえば、都内の地価は比較的安い荒川区や葛飾区でも坪200万円前後ですが、当社は坪50万円以下の郊外に絞って用地を選定しています。これだけでも取得価格をかなり大きく抑えることができますが、当社の物件は、建築コストを通常よりも約3割安くしています。土地と建物の両面でコストを極限まで抑えているのです。

 

ここで気になるのは、「郊外の物件で入居者が確保できるのか?」という点でしょう。

 

都心は人口が増えているので入居者を確保しやすいけれど、人口が減っているエリアの多い郊外は、需要がどんどん萎んでいくのではないかと心配する方が多いようです。

 

しかし実際のところ、入居者が確保できるかどうかは、人口の多寡や増減だけでなく、物件の需給バランスによって決まります。たとえ人口が増えていても、その地域に競合するマンションがたくさん建設されると入居者の確保は困難になります。

 

逆に人口は減っていても、マンションの数が少なければ需要と供給のバランスが取れて入居者を確保しやすくなります。そう考えると、必ずしも郊外が不利だというわけではありません。

 

またワンルームマンションの場合、入居付けのしやすさは、人口の増減だけでなく、単身世帯数の多寡や増減に大きく影響されます。高齢化や非婚化・晩婚化などの影響によって、人口は減っても単身世帯数が増えている地域はいくつもあります。

 

物件の需給バランスがよく、単身世帯数が増えているエリアを選べば、空室リスクや家賃下落リスクを抑えることは十分可能だと言えます。

 

当社の場合、人口や単身世帯数の増減、最寄り駅の乗降客数とその増減、物件の需給バランスなどを複合的に判断して、仕入れる土地を選定しています。

 

とくに狙いを定めているのは、最寄り駅の乗降客数はそれほど多くないのに、単身世帯数が多いエリアです。埼玉県の坂戸や北坂戸などが代表例です。坂戸のように大学の多い街や、大きな工場などのあるエリアは、電車で通う人は少なくても、近くに部屋を借りて通学・通勤する人の数が多くなります。その分、単身世帯数が増えるのです。

 

一般に乗降客数が少ない駅の周辺は競合する物件が少なく、土地の値段も安くなりがちです。しかし、単身世帯が多ければ十分なワンルーム需要が見込めるので、空室リスクや家賃下落リスクに悩まされる心配はまずありません。つまり、満室が期待できる物件を安く手に入れられるわけです。

 

 

取材・文/渡辺 賢一 撮影(人物)/佐山 順丸
※本インタビューは、2018年5月16日に収録したものです。