景気対策の一環として1990年に誕生
さて、第1回ではアメリカの移民投資プログラムであるEB-5(イービーファイブ)投資永住権プログラムについて簡単に紹介しましたが、第2回の今回は、プログラムの成り立ちや参加基準についてお話したいと思います。
EB-5プログラムは、隣国カナダの投資移民プログラムの成功に便乗しようとした思惑もあったようですが、不況にあえぐアメリカの景気対策の一環として、一定額の投資を行うことで申請者一人(付帯家族含む)あたり10名の現地雇用創出を条件に、永住権を付与する移民法プログラムとして、1990年に誕生しました。2003年には50万ドル(手数料、弁護士費用別途)の特別規定も誕生し、その手軽さから人気に火がつき、今ではすっかりメジャーな移民プログラムとなっています。
諸外国で行われている類似プログラムには、高額投資ではあるものの一定期間後に資本金の返却を約束するものだったり、債券や株式投資を認めていたりするプログラムもある一方で、アメリカのEB-5投資永住権プログラムは、リスク投資を自らの責任で行うという、何とも資本主義大国のアメリカらしい移民プログラムであると言えます。
つまり投資先の選択を誤れば、あなたの資産をゼロにしてしまうかも知れないリスクを伴った投資であることを、よく理解する必要があります。
逆に言えば、大切な資産の投資先として考えたとき、これだと思えるプロジェクトや企業に出会えたなら、投資の副産物としてアメリカの永住権まで手にできるという、合理的かつ魅力的な移民プログラムとなることは想像に難くありません。
投資金の「資金源の証明」が重要に
現行法で規定されているEB-5プログラムの参加基準としては、1.投資金の資金源の証明が可能であること、2.重犯罪歴がないこと、3.伝染病を患っていないこと、と至ってシンプルです。
ただ、この中で意外と厄介なのは「資金源の証明」でしょう。
昨今テロリズムなどの脅威にさらされているアメリカでは、特にマネーロンダリング(資金洗浄)資金の流入を厳しく取り締まっています。
このため、EB-5として永住権申請を行うための投資資金は、その資金がどのような経緯で投資家の資産として蓄積されてきたものなのか、移民法の規定に従い細かくチェックされます。具体的な必要書類として挙げられるのは、通帳の入金履歴や数年分の確定申告書などといった公的に証明可能な書類です。
それらの資金源に掛かる書類や申請者バックグラウンドの書類を元に、アメリカの移民法に精通した弁護士が、永住権申請のための書類を作成していきます。ここは弁護士の腕の見せどころです。担当弁護士は資金源からバックグラウンドに至る申請者の膨大な書類をまとめあげ、いかに申請書が移民にふさわしい人物なのかを、戦略をもって立証していくという作業を行っていきます。つまり、信用のおけるハイスキルな弁護士に申請を依頼するということも、このプログラムにおいて欠かせないキーポイントの一つといえるでしょう。
次回は、申請手続きの流れやEB-5の対象となる投資物件についてお話したいと思います。