「建築家のデザイン」を取り入れたオンリーワンの物件で知られる神奈川の注文住宅大手タツミプランニングと、日本最大級の建築家ネットワークを作り上げたアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)。両社がタッグを組んで空室リスクの低減を狙う、「建築家のデザイン」を取り入れた収益物件の魅力に迫る本企画。第7回目、第8回目は番外編として、徹底的な差別化を狙った賃貸物件として注目されている「ガレージハウス」の魅力について、建築家・矢作昌生氏とマセラティみなとみらい・金子朋永氏に語っていただく。後編となる今回のテーマは「ガレージハウスのデザイン」である。

「ロングスパン」で愛され続けるデザインの必要性

――マセラティに代表されるようなイタリア車の特徴、そして魅力をお聞かせください。

 

マセラッティみなとみらい・金子 朋永 氏
マセラティみなとみらい・金子 朋永 氏

金子 やはり、マセラティを愛好する人のほとんどが、まずこのデザインに魅了されます。世界では、新しく機能的な車よりも、60年代や70年代に製造された、クラシックカーがブームになっています。中には“ヴィンテージカー”と呼ばれるような、90年以上も前の車にも人気が集まっている。

 

必然的に“長く愛されるデザイン”を意識しながら、車を製造していますから、何年たっても愛され続けている。イタリアの車というのは、よくワインに例えられています。“熟成されたものに価値がある”という考え方ですね。最初から、長く愛されることを想定して作っているのです。

 

矢作 アメリカの車も、長く乗ることを前提に作られていますから、何十年たっても交換用のパーツが手に入ります。ところが日本の車だけは、少し感覚が違っているように思います。車の寿命は10年といわれ、それを超えた車のパーツが手に入らない。新しい車を買って下さいと言わんばかりの状況に追い込まれる。欧米諸国とはまるっきり“時間軸”というものが違う。

 

建築物もそうかもしれません。ハウスメーカーの住宅は、“30年で建て替えれば良い”という感覚で作られるものですから、材料も安価なものを使用し、デザインもその時代のブームに乗るような傾向があり、10年経つとデザイン的に古めかしくなり、そして30年後には建て替えるというサイクルが出来上がっています。僕自身、やはりイタリアの車のようなものづくりをしたいと思っています。機能的な部分も、美意識も含め、ロングスパンで愛され続けるデザインを考える必要があります。

 

「ディティールに神が宿る」マセラティのデザイン

金子 時間軸の違いというお話、大変共感します。マセラティという車は、どんなに年月が経過しても、“捨てる車はない”といわれています。細部までこだわった飽きのこないデザインという意味でも、矢作先生が考えられている建築物と共通する部分があるように感じました。マセラティには車のデザイナーとして成功されている方が多く在籍していて、そういった方々が現在、デザインチームの中心にいらっしゃる。

 

もちろん日本人の中にも有名なカーデザイナーはたくさんいらっしゃいますが、イタリア人は、美しいものを見る目があるのかもしれないですね。どの角度からも綺麗に見えるフォルムを生み出す、その感覚はイタリア車、いや、マセラティならではのものかもしれません。

 

建築士・矢作 昌生 氏
建築士・矢作 昌生 氏

矢作 車も建築物も骨格がしっかりしていなければ、そのフォルムは美しくなりません。しかも、建築が風や光など自然の要素を取り込むのと同じように、車も空力など計算したうえで、あのフォルムができているのですから、単に“かっこいい”という理由だけでデザインしているわけではないのです。

 

骨格から始まり、細部にわたって細かくデザインされている車に負けないくらいのガレージハウスを作ろうというのは、至難の業ともいえますが、その分、建築家としてもやりがいの大きな仕事となるでしょう。

 

建築業界には“ディティールに神が宿る”と言う話があって、そこまできっちりデザインをしなければ、良いものはできないと教わってきているのですが、マセラティの細部へのこだわりにも同様な感覚を持っています。マセラティのオーナーさんのガレージハウスを設計することがあれば、より細心の注意とエネルギーを注ぎながら取り組まなければならないと感じました。

 

 

取材・文/伊藤 秋廣 撮影(人物)/永井 浩 
撮影協力・マセラティみなとみらい(http://www.blue-trident.co.jp/)
※本インタビューは、2017年8月30日に収録したものです。