「建築家のデザイン」を取り入れたオンリーワンの物件で知られる神奈川の注文住宅大手タツミプランニングと、日本最大級の建築家ネットワークを作り上げたアーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)。両社がタッグを組んで空室リスクの低減を狙う、「建築家のデザイン」を取り入れた収益物件の魅力に迫る本企画。第7回目、第8回目は番外編として、徹底的な差別化を狙った賃貸物件として注目されている「ガレージハウス」の魅力について、建築家・矢作昌生氏とマセラティみなとみらい・金子朋永氏に語っていただく。

住宅部分と一体化した“リビングガレージ”という発想

――そもそも、「ガレージハウス」と「車庫付き住宅」の違いはどのようなものなのでしょう?

 

建築士・矢作 昌生 氏
建築家・矢作 昌生 氏

矢作 後から取って付けたような構造ではなく、住宅部分と一体になっているものがガレージハウスであるとの認識です。車の設置場所から住居への動線はもちろん、空間としてのつながりも、車庫で遮断されるものではない。要するにカースペースを取り除いてしまうと、その建築物が成立しないものですね。

 

――ガレージハウスと聞くと、真っ先にアメリカのものをイメージしてします。

 

4年ほどロサンゼルスに住んでいたのですが、郊外の家には必ずと言っていいほど車庫がついています。アメリカのガレージハウスは、単なる“車を収納する場所”ではありません。例えば、アップルを創業したスティーブ・ジョブスは、そこでコンピューターのDIYをスタートして、世界的な企業にまで育て上げましたよね。要するに、自分の好きな車を眺めながら過ごす場所でもあり、物作りを楽しんだり、様々なアクティビティが行われる場所でもあるのです。

 

金子 矢作先生のおっしゃる通り、ガレージハウスは車が好きな方にとって、特別な場所ですよね。先生は、実際にどのようなガレージハウスを手掛けてこられたのですか。

 

矢作 車3台分のスペースをとって、実質は2台しか置かず、そこにキッチンを設置したいというお話がありました。車を眺めながらキッチンで料理を作って食事をしたり、お酒を飲む。“リビングガレージ”というか、“ガレージリビング”のようなスペースを提供したことがあります。また、これは ガレージハウスに限ったことではないのですが、建築というのは、周辺環境と良い関係をつくることが重要です。

 

以前、とても景色が良い丘の上にあった少し幅の狭い敷地に、私が「トンネルハウス」と名付けた、細長いトンネルのようなガレージハウスを設計しました。穴の向こうに、すばらしい空間が広がるような配置を考えました。住宅のリビングから、美しい景色と2台の車を眺めることができる。そんな構造のものを用意して、お客様にご満足をいただきました。

 

「車と風景」が一体化して、一つの絵画になる

――“リビングガレージ”という発想は、とても素敵ですね。そこまで車を大切にする感覚は、日本独特のものですか? アメリカではいかがでしたか。

 

矢作 典型的なアメリカ人は、車を毎日洗ったりはしません。すごくラフに扱ってはいますが、それはそれで“アメリカの良さ”でもあるわけですよね。埃っぽい場所にドカンと車が置いてあるような、そんなガレージハウスも多いのですが、そんなラフなスペースに、ものすごく価値がある車が収まっているケースも、結構あったりするのですよ。もちろん、それは“古き良きアメリカ”を体言しているような、一般的なガレージハウスであって、最近では、日本と同じようなガレージを、しっかり作っている方もずいぶん増えてはいます。

 

そして感じるのが、日本でもアメリカでも、車に対する思いが二極化しているのではないかということです。単純に移動できれば良いと考えている人たちと、ライフスタイルの重要な部分を占めている人たちとに、はっきり分かれている。僕もそうなのですが、後者は、“車がない人生なんて考えられない”というタイプの人間ですね。

 

マセラッティみなとみらい 金子 朋永 氏
マセラティみなとみらい・金子 朋永 氏

金子 そうですね、完全に二極化しているというのは、この商売を通じて強く実感するところです。お車を単なる交通手段のひとつと考えていらっしゃる方は、当然のことながらガレージハウスに興味がわかないのかもしれません。二極化が進むことで、車が好きな方は、ますます趣味性が強くなり、愛する自分の車を手元に置いておきたいと考えるようになりますよね。

 

マンションにお住まいの方は、立体駐車場を利用されますが、別荘をお持ちの方は、必ず車専用のスペースを作っています。“居間から車が見えるんだよ”とお見せいただいたこともありますね。

 

矢作 自分の愛車を眺めるときには、その背景も重要なんですよね。街の中で見るのと、別荘があるような緑に囲まれている場所で見るのでは、大きな違いがある。車が好きな人って、結局色々なシチュエーションで愛車を眺めたい。ついでにいえば、自分が愛車に乗っている姿って見えないですけれども、実はそれもしっかり見たい。こうなってくると、もはや車は嗜好品以外の何物でもなくなりますよね。

 

金子 マセラティに乗っている方も、自分が運転する姿を見たいとおっしゃいます。そして、それが美しい光景と一体になって、ひとつの絵画になるようなシチュエーションがあれば、なおさらご満足されると思います。先ほどご紹介いただいた、トンネル状のガレージハウスの例など、まさにそんなイメージにぴったりの構造ですね。そういったシーンにおいても、きっと私どもが扱うマセラティは、ぴったりフィットするのではないでしょうか。

 

取材・文/伊藤 秋廣 撮影(人物)/永井 浩 
撮影協力・マセラティみなとみらい
※本インタビューは、2017年8月30日に収録したものです。