レオパレス21 × サプライチェーン・ファイナンスのメリット ※写真はイメージです。本文とは関係ありません。

昨年末の下請取引に関するルール改正を経て、下請事業者への支払いサイトの短縮が強く求められるようになってきた。大手賃貸業界でレオパレス21が先陣を切って、電子記録債権を利用した決済プラットフォーム事業を展開するTranzaxのサプライチェーン・ファイナンスを導入しようとしている。第5回目は、サプライチェーン・ファイナンスの導入によるレオパレス21としてのメリットについて、同社の深山忠広副社長、芦村戦略企画部長とTranzax小倉隆志社長に伺った。

支払いの振込手数料も大幅に削減が可能に

――レオパレス21にとってのサプライチェーン・ファイナンス導入のメリットを改めてお聞かせください。

 

株式会社レオパレス21マーケット開発統括部 戦略企画部長芦村健人氏
株式会社レオパレス21 マーケット開発統括部     
戦略企画部長 芦村健人 氏

芦村 これまでの話と重複しますが、まずサプライヤーさんの資金効率が向上することによって、弊社の請負事業における現場での人員確保も容易になり、計画通り施工が進むというメリットが考えられます。他の建設会社との差別化にもなりますので、協力してくれる工務店が今後増えてくる可能性もあります。

 

この際、工務店には何らシステム投資等の負担が生じないと話しましたが、弊社もサプライチェーン・ファイナンスを導入するうえでのコスト負担はほぼゼロです。SPCを設立する際の資本金を数十万円出資するだけ。専用のシステムを構築する必要もありません。

 

――投資負担がほぼゼロで、工務店を囲い込めるということですね。

 

株式会社レオパレス21 取締役副社長執行役員    深山忠広 氏
株式会社レオパレス21 取締役副社長執行役員    
深山忠広 氏

深山 むしろ、メリットが大きすぎるといっていいかもしれません(笑)。これまでの買掛事務は、請負事業部、賃貸管理事業部、財務経理部門と分散していましたが、各事業部の業務をSPCに一元化することで、発生する業務効率化のメリットは計り知れません。

 

――SPCにレオパレス21が社員を出向させたりはしないのですか?

 

小倉 いや、すべての買掛事務はTranzaxのほうで代行する形になるのです。レオパレス21さんは、サプライヤーさんに将来的に支払う買掛明細が確定した段階で、SPCにそのデータを送信するだけ。あとは、当社のスタッフがその明細をチェックして、サプライヤーさんから資金化の要望があった段階で、債権を買い取ってそれに見合った資金を工務店に振り込むというかたちになります。

 

深山 そのため、振込手数料も大幅に削減できると考えています。これまでは、サプライヤー各社に弊社から代金を振り込んでいましたが、当然、その際には数百円の振込手数料が発生します。しかし、サプライチェーン・ファイナンスを導入して以降は、SPCに対して必要な資金を振り込むだけ。SPCが振込手数料を負担して、各サプライヤーへの振り込みを行うわけです。

 

弊社は工務店に、建材の卸業者などを含めて、全国数百社のサプライヤーとお付き合いをさせてもらっています。年間の建築請負棟数はだいたい700~800棟。上棟時、中間時と出来払い制をとっているので、請負事業だけでも毎年数千件の振り込み処理を行っていると考えていいでしょう。その振込手数料の負担は今後、何百分の一に縮小する可能性もあるわけです。

 

生産性を向上させるサプライチェーン・ファイナンス

――確かに振込手数料の負担はバカになりませんね。

 

Tranzax株式会社代表取締役社長 小倉隆志氏
Tranzax株式会社代表取締役社長 小倉隆志 氏

小倉 今、政府をあげて働き方改革などを進めていますよね。昨年は長時間の残業問題で叩かれた会社もありました。今年に入っても、大手運送業者がやり玉に挙げられています。業界問わず、いかに生産性を向上させるかが課題になっているのです。その点で言うと、サプライチェーン・ファイナンスの導入によって、煩雑な事務作業をアウトソーシングでき、レオパレス21さんの残業代も削減できるのではないかと思っています(笑)。

 

一方で、中小企業庁や公正取引委員会は“下請Gメン”を組織して、下請イジメを徹底的に取り締まろうと動いています。これまでは親事業者にアンケート用紙を送付して、おかしな回答をした会社を調査するという方法を取ってきたのですが、今は80人のGメンが直接、下請事業者を訪問して聞き取り調査を行っているのです。当然、今までよりも下請いじめは厳しく取り締まられることになるでしょう。

 

そのなかで、レオパレス21さんのように、サプライヤーさんのメリットを考え、いち早くサプライチェーン・ファイナンスを導入されるような企業に対する評価は向上していくのではないかとも考えています。

 

深山 弊社のイメージアップにもつながるということですね。そんな過分な効果まで得られたら、ありがたいことこの上ない(笑)。

 

(続)

 

株式会社レオパレス21 取締役 副社長執行役員
営業総本部長
賃貸事業部長
コーポレート業務推進本部長

株式会社レオパレス21入社後、建築請負事業本部本部長、営業総本部長などを歴任し、2014年、取締役副社長に就任。同時期にコーポレート業務推進本部を立ち上げ、本部長として賃貸住宅のIoT化やAI導入、FinTech導入の旗振り役となる。

著者紹介

株式会社レオパレス21 マーケット開発統括部
戦略企画部長

株式会社住友銀行(現、株式会社三井住友銀行)入行後、法人営業部門、企業金融部門、不動産ファイナンス部門に従事。同行、法人業務部上席推進役、銀座法人一部長などを歴任。2016年10月より現職。サプライチェーンファイナンスの導入を主導する。

著者紹介

Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

著者紹介

連載FinTechへの先進的な企業の取り組み~レオパレス21がサプライチェーン・ファイナンスを導入した理由

取材・文/田茂井 治 撮影/永井 浩 
※本インタビューは、2017年5月29日に収録したものです。