支払いの振込手数料も大幅に削減が可能に
――レオパレス21にとってのサプライチェーン・ファイナンス導入のメリットを改めてお聞かせください。
芦村 これまでの話と重複しますが、まずサプライヤーさんの資金効率が向上することによって、弊社の請負事業における現場での人員確保も容易になり、計画通り施工が進むというメリットが考えられます。他の建設会社との差別化にもなりますので、協力してくれる工務店が今後増えてくる可能性もあります。
この際、工務店には何らシステム投資等の負担が生じないと話しましたが、弊社もサプライチェーン・ファイナンスを導入するうえでのコスト負担はほぼゼロです。SPCを設立する際の資本金を数十万円出資するだけ。専用のシステムを構築する必要もありません。
――投資負担がほぼゼロで、工務店を囲い込めるということですね。
深山 むしろ、メリットが大きすぎるといっていいかもしれません(笑)。これまでの買掛事務は、請負事業部、賃貸管理事業部、財務経理部門と分散していましたが、各事業部の業務をSPCに一元化することで、発生する業務効率化のメリットは計り知れません。
――SPCにレオパレス21が社員を出向させたりはしないのですか?
小倉 いや、すべての買掛事務はTranzaxのほうで代行する形になるのです。レオパレス21さんは、サプライヤーさんに将来的に支払う買掛明細が確定した段階で、SPCにそのデータを送信するだけ。あとは、当社のスタッフがその明細をチェックして、サプライヤーさんから資金化の要望があった段階で、債権を買い取ってそれに見合った資金を工務店に振り込むというかたちになります。
深山 そのため、振込手数料も大幅に削減できると考えています。これまでは、サプライヤー各社に弊社から代金を振り込んでいましたが、当然、その際には数百円の振込手数料が発生します。しかし、サプライチェーン・ファイナンスを導入して以降は、SPCに対して必要な資金を振り込むだけ。SPCが振込手数料を負担して、各サプライヤーへの振り込みを行うわけです。
弊社は工務店に、建材の卸業者などを含めて、全国数百社のサプライヤーとお付き合いをさせてもらっています。年間の建築請負棟数はだいたい700~800棟。上棟時、中間時と出来払い制をとっているので、請負事業だけでも毎年数千件の振り込み処理を行っていると考えていいでしょう。その振込手数料の負担は今後、何百分の一に縮小する可能性もあるわけです。
生産性を向上させるサプライチェーン・ファイナンス
――確かに振込手数料の負担はバカになりませんね。
小倉 今、政府をあげて働き方改革などを進めていますよね。昨年は長時間の残業問題で叩かれた会社もありました。今年に入っても、大手運送業者がやり玉に挙げられています。業界問わず、いかに生産性を向上させるかが課題になっているのです。その点で言うと、サプライチェーン・ファイナンスの導入によって、煩雑な事務作業をアウトソーシングでき、レオパレス21さんの残業代も削減できるのではないかと思っています(笑)。
一方で、中小企業庁や公正取引委員会は“下請Gメン”を組織して、下請イジメを徹底的に取り締まろうと動いています。これまでは親事業者にアンケート用紙を送付して、おかしな回答をした会社を調査するという方法を取ってきたのですが、今は80人のGメンが直接、下請事業者を訪問して聞き取り調査を行っているのです。当然、今までよりも下請いじめは厳しく取り締まられることになるでしょう。
そのなかで、レオパレス21さんのように、サプライヤーさんのメリットを考え、いち早くサプライチェーン・ファイナンスを導入されるような企業に対する評価は向上していくのではないかとも考えています。
深山 弊社のイメージアップにもつながるということですね。そんな過分な効果まで得られたら、ありがたいことこの上ない(笑)。
(続)