レオパレス21が取り組む「IoT化とFinTechサービス」
――これまで聞く限り、建設業界におけるサプライチェーン・ファイナンスの導入は新しい取り組みと考えられます。しかし一方で、“町の工務店”は電子記録債権を活用したFinTechとは程遠いイメージです。導入に当たってハードルの高さは感じませんか?
深山 弊社はこれまで、業務改善のための取り組みは積極的に行ってきました。ハード面では物件のIoT化を推進し、ソフト面ではFinTechサービスの提供を開始しております。IoT化の代表例は、「Leo Remocon」と「Leo Lock」です。「Leo Remocon」は、弊社物件に標準で備え付けられている家電はもちろん、入居者様がお持ちの赤外線対応家電もスマートフォンから遠隔で操作することなどが可能となるものです。こちらは2016年10月完成の新築物件から標準装備しています。
「Leo Lock」は、いわゆるスマートロックであり、ICカードやスマートフォンを鍵とすることで、従来の鍵を持つ必要が無くなる他、先ほど申し上げた「Leo Remocon」と連携させることで、施錠、開錠の確認が遠隔で可能となる他、鍵の開け閉めで室内の電灯を自動的に点灯、消灯することが可能となっております。こちらは2017年4月より受注した10月完成の物件より順次搭載を進めていきます。
――では、FinTechの分野ではどんな取り組みを?
芦村 はじめに弊社で物件を建設させて頂くオーナー様向けにクラウド型の確定申告ソフトをFinTech系ベンチャー企業と一緒に開発して提供しています。オーナー様が保有する賃貸物件の収支を自動仕訳して、確定申告の手間を大幅に簡略化するサービスです。そのほかにも送金代行サービスを今年から導入して送金コストの削減も図ってきました。
――そうした取り組みがあったからこそ、サプライチェーン・ファイナンスの導入に対してハードルは感じなかったと?
深山 実をいうと、私自身は「サプライチェーン・ファイナンス?」という感じではありました(笑)。最初にTranzaxさんのことを知ったのも、昨年10月の『日経新聞』の報道でしたから。パッと記事を読んだ限り、弊社にはどんなメリットがあるか理解できなかったのですが、サプライヤーにとっては間違いなくメリットがあるものだと感じたんです。
初期投資の負担が軽いサプライチェーン・ファイナンス
――しかし、町の工務店に「サプライチェーン・ファイナンスを導入する」と言って、ピンときますかね?
深山 いえ、丁寧な説明が必要だと考えています。なぜなら、メールよりもFAXで工事の受注を行っている工務店も多いのです。おそらく、FinTechという言葉は知っていても、どういうものかわからないという工務店経営者の方が多いと思います。しかし、Tranzaxさんのサプライチェーン・ファイナンスは何の初期投資もいりません。極端な話、パソコンがなくてもFAXがあれば導入できます。
小倉 おっしゃるとおり、導入のハードルはほぼないと言って間違いありません。例えば、全国銀行協会の「でんさいネット」という電子記録債権機関を利用する場合には、必ずネットバンキングの口座が必要になります。しかし、当社のサービスはいつも使っているメインバンクの銀行口座が1つあれば大丈夫。メガバンク系の銀行口座でなくても問題ありません。
発注企業であるレオパレス21さんに関しても専用のシステム投資等は必要ありません。というのも、物件が出来上がって検収が済んだ段階で発生する買掛金の明細をSPCに転送してもらい、その明細をもとにSPCがサプライヤーさんへの支払業務を担う形になるからです。
そのうえで、工事を担当した工務店から債権の資金化を求められたら、0.2%の金利を差し引いてお金を振り込む。このときの支払い通知書はFAXで送信することも可能。だから、IT化を進めていない工務店であっても、すぐにサプライチェーン・ファイナンスを導入することができるのです。
(続)