定年退職を機に長年の夫婦関係を解消し、第二の人生を歩み出す熟年離婚。束縛から解放されて自由を満喫する人がいる一方、想定外の孤独や生活苦に直面し、後悔を募らせる人も少なくありません。同じ選択をしながら、なぜ老後の生活に大きな差が生まれてしまうのでしょうか。熟年離婚の明暗を分ける決定的な要因を探ります。
「離婚して正解」から一転、67歳で婚活へ…定年後に離婚した2人の60代男性にみる、「熟年離婚」天国と地獄の境界線 ※写真はイメージです/PIXTA

離婚後の明暗を分けた「夫婦以外の居場所」と生活設計

定年後の熟年離婚は、長年の夫婦関係に区切りをつけ、新しい人生を始める選択肢の一つです。しかし、離婚すれば自動的に自由で充実した老後が手に入るわけではありません。

 

2人のその後を比べると、違いは大きく2つあります。

 

一つは、夫婦以外の人間関係や居場所を持っていたかどうかです。

 

田中さんには、離婚後も楽しめるゴルフがあり、気軽に会える学生時代の友人もいました。妻との関係が終わっても、日々の楽しみや人とのつながりまで失うことはありませんでした。

 

一方、高橋さんの交友関係は仕事を通じたものが中心でした。定年退職によって職場とのつながりが薄れると、人と会う機会も減っていきました。夫婦関係から解放された後、自分の時間をどう過ごすのか。その準備が十分ではなかったのです。

 

内閣府『令和7年度 高齢社会対策総合調査(第10回)』によると、日本の60歳以上の男性の45.3%(全体で37.9%)が「親しい友人はいない」と回答。また「同居家族以外に頼れる人はいない」男性も21.4%に上ります。定年後に孤立しないためには、仕事関係や家庭だけに依存せず、趣味や地域活動など家庭以外の人間関係や居場所を現役時代から意識的に築いておくことが重要といえるでしょう。

 

もう一つは、離婚後の経済的な見通しです。

 

夫婦で暮らしていたときには、住居費や光熱費、食費などを2人で負担していた家庭も少なくありません。離婚すれば、住まいを確保する費用に加え、日々の生活費も基本的には一人で賄うことになります。財産分与で得た資金があっても、老後の生活が長く続くことを考えれば、計画的に使う必要があります。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の1世帯当たり平均所得金額は336万1千円であり、生活意識について「苦しい」(大変苦しい・やや苦しい)と答えた割合は52.1%に上ります。

 

単身生活では固定費の分担ができず負担が増すため、離婚後の自由を持続させるには、長期的かつ現実的な資金計画が不可欠です。