定年退職を機に長年の夫婦関係を解消し、第二の人生を歩み出す熟年離婚。束縛から解放されて自由を満喫する人がいる一方、想定外の孤独や生活苦に直面し、後悔を募らせる人も少なくありません。同じ選択をしながら、なぜ老後の生活に大きな差が生まれてしまうのでしょうか。熟年離婚の明暗を分ける決定的な要因を探ります。
「離婚して正解」から一転、67歳で婚活へ…定年後に離婚した2人の60代男性にみる、「熟年離婚」天国と地獄の境界線 ※写真はイメージです/PIXTA

「こんなはずじゃなかった」離婚後に待っていた想定外の老後

一方、同じように定年後に離婚したものの、現在の暮らしに複雑な思いを抱えている男性もいます。

 

高橋修さん(67歳・仮名)は、64歳のときに妻と離婚しました。結婚生活は約40年。現役時代から夫婦の会話は少なく、定年後は妻と顔を合わせる時間が増えることに強い抵抗がありました。

 

「これから先も、あの人と一緒に暮らすのは無理だと思いました」

 

高橋さんは退職を機に離婚を切り出しました。妻も以前から夫婦関係に不満を抱えていたため、話し合いは比較的早くまとまりました。

 

財産分与を済ませ、高橋さんは一人暮らしを始めます。当初は自由な生活に満足していました。食事の時間も休日の過ごし方も自分で決められる。誰かに予定を説明する必要もありません。

 

ところが、生活は次第に変わっていきました。

 

友人関係は現役時代の仕事仲間が中心だったため、退職後は会う機会が減少。職場を離れるにつれて人とのつながりが薄れ、休日に予定のない日が増えていきました。

 

体調を崩したときには、買い物や通院の手配も自分で行う必要があります。以前なら妻に頼めたようなことも、今はすべて一人で対応するしかありません。

 

さらに、家賃や食費、光熱費などを一人で負担する生活は、想像以上にお金がかかりました。夫婦で暮らしていたときには分担できていた支出も、一人になればすべて自分の負担です。

 

「夫婦で暮らしていたときは、多少の不満はあっても、家に帰れば誰かがいました。今は自由ですが、何かあっても自分で何とかするしかない」

 

夫婦の生活に窮屈さを感じて離婚を選んだものの、現在、高橋さんは婚活を始めたといいます。

 

「一人でいること自体が嫌というわけではありません。ただ、何日も誰とも話さない日が続くと、これから先もずっとこの生活なのかと考えてしまいます。離婚……短絡的だったという思いは、ゼロではありません」